恐怖のハロウィン   2









震えるアリシアの指先には元凶とも言える男、
レイン・アラストルが平然と立っていた。


腰に手を当て、ため息を付いているところが更にむかつく……
アリシアは怒りを堪えるかのように数回深呼吸をすると、レインに再び向き直る。
が、今度はそのレインの姿にノックアウトされた。



少し長めの銀色の髪は邪魔にならないように後ろに縛られ、
ワイシャツの上からはエプロンを身につけている。
そしてその手には何故かボールと泡立て器………



何か妙に色っぽいレインに一瞬アリシアは女かと思ったほどだ。
ちょっとまってぇぇぇ!!!!
何で女の私よりも料理している姿が似合っているのよー!!!
そう叫びそうになるのを必死で堪えながらアリシアは肩を上下させ言った。





「………で、なんであんたがここにいるのよ………」




「見ての通りです、お菓子を作っている最中なんですよ」




「お菓子ぃぃ?」





意味が分からない。と、言わんばかりの目で見てくるアリシアにレインは
爽やかな笑みを浮かべ、ボールの中身をかき混ぜながら言う。




「明日はハロウィンですよね」



「うん………」



「ですから私の所にもいろんな人がお菓子を貰いに来るのですよ。
と、言っても来る人間は限られていますけどね」




「ふーん」




「で、アリシア姫は何を作るのですか?」




「え?私は数を多く作れて楽なクッキーを……て、何で私があんたに言わなきゃ何ないのよ!!」








苛立った口調で叫ぶアリシアにレインは言い切った。
その笑顔が妙にむかつくのは気のせいでしょうか?






「私もアリシア姫のためにケーキを作っていますから楽しみにしていて下さい」



「ケーキ?」



「はい。こう見えても私は料理は得意な方なんです」



「……………」







にこにこ笑いながらボールの中身をかき混ぜる姿は確かに様になっている。
むう……こうなったら頑張るしかない。
アリシアも料理長の指導のもと、キッチンに立つが………





「全然出来ないぃぃぃ!!」






卵を割るのですらまともに出来ぬアリシアは思わずそう叫ぶ。

元々、自分は食べるのが専門で、
こういったクッキーなどお菓子は作れないのだ。
その間にも着々と作っていくレインを眺めながらアリシアはため息を付いたのだった。












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