恐怖のハロウィン 3
厨房はいつの間にか甘い香りが漂ってくる。
そして、何処から話を聞いてきたのかは知らぬが、
姉のシリアと兄のゼバイルが様子を見にやってきていた。
と、言ってもアリシアがお菓子作りに失敗している姿を見に来たのだが。
案の定二人とも声には出して笑わないが、口元を押さえている。
本当失礼な奴らだ。
アリシアはムッとした表情でオーブンからクッキーを取り出す。
今し方焼けたところだ。が………
「真っ黒だな」
「ええ、アレ誰が食べるのかしらね?」
ゼバイルとシリアの呟きにとうとうアリシアが切れた。
目の前のクッキーを皿に乗せると二人の目に差し出す。
黒い笑顔が怖い。
「ぜひとも見に来たんですから食べていって下さいね、
ゼバイルお兄さま、シリアお姉さま」
「「え??」」
これを??と、二人ともアリシアとクッキーを
見つめると無理やりアリシアはゼバイルに食わせた。
黒い固まりがゼバイルの口の中に入ったと同時に
どうしたことかゼバイルが白目をむき倒れてしまった。
―――――――どうやら相当不味かったようだ。
それを見たシリアは青ざめたようにゼバイルを見ると
素早い動作でゼバイルの服を掴み、言った。
「た、大変だわ……ゼバイルが……
と、とりあえず私はゼバイルを医務室に連れて行くわね、じゃアリシアちゃん頑張って」
「あ、シリアお姉さま……クッキーはまだ……」
「失礼しました〜」
「「………………」」
アリシアがクッキーを差し出そうとするが、
その前にシリアはありえないスピードでゼバイルを
引きづりながら厨房を出ていってしまった。
一方の料理長とレインはその現場を目撃し、言葉を失っていた。
まさかあの焦げたモノを無理やり自分の兄に食わせるとは……恐ろしい人だ。
しかもなんか食べた瞬間ゼバイル王子、白目向いていたんですけど……
何入れたんですか?
思わずレインは料理長に視線を向けるが、
料理長も心当たりがないのか首を傾げている。
その時、アリシアが一人ぶつぶつ言いながら問題発言をした。
「やっぱり、隠し味にラー油とわさびを入れたのがいけなかったのかしら?」
「「そんなもんふつー入れませんから!!」」
思わずその場にいた二人はアリシアに向かってそう突っ込んでしまった。
きっと知らぬうちに色々なモノを混ぜていたのだろう。
…………ある意味殺人クッキングだ……
そうレインは思ったとか……
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