水面下の花びら 3
人を好きになるのに理屈はいらない―――――
好きになってしまったらその思いは止まることはないのだから……
ゆっくり回された手はとても温かくて涙がすぐに零れた。
やっと素直になれた……自分自身に対しても、
――――――そして……レインに対しても………
結婚を嫌がっていた頃の私が今の私を見たら信じられないと叫ぶだろう。
だけど、今必要としているのは………
かつて好きだった人ではない、目の前にいるレインなのだから……
「もうどこにも行かないで……」
「分かっています。ずっと側にいます」
貴女の側に……永遠にいましょう、この命が尽きるまで……
深い闇の中に佇む二人に光を当てるかのように月がきらびやかに光る。
望んだのはたった一つの愛……
取り合った手は二度と離されることはない。
寄り添う二人の姿がよりいっそうそう感じさせた。
「やっとくっついたか」
その二人の様子を水晶玉から見ていた一人の青年は呟いた。
レインのライバルでもあり、友人でもあるルイスだ。
だが、その瞳はまるで面白いモノでも見たかのように細められている。
レインのおかげで色々大変な目にあったが、
面白いモノが見られたし、良しとしよう。
それにローレシア様も帰ってきたことだしな。
実は彼、ルイスは一ヶ月前からこの国で偉いとも言われる
五人の魔術師達にローレシアの居場所をさがしてくれと頼まれていた。
この国で水晶玉を使った人捜しはルイスが一番優れているからだ。
おかげでガッポリ稼がせて貰ったからラッキーだ。
たかがローレシア様を捜すだけで何を戸惑っているのやら……
ま、自分には関係ないのだが……
「それにしても、あの姫さんのどこが良いのかねぇ?」
ルイスは首を傾げながら言った。
昔からレインはよくもてる。いや、それは有り得ないぐらいに。
確かに顔も良ければ実力もあるのだからそこら辺の女達は黙っていないだろう。
そんなレインに詰め寄られても嫌だって言うほどの姫さんだもんな…
逆にそう言うところが良いのか?
顔だけは確かに可愛いと思うが、自分の好みではない。
もっともそんな事言ったら明日には自分の命は消えているだろう。
レインの手によって……
意外と嫉妬深いからな……レインは。
昔から良く付き合っている自分だからこそ分かることだ。
人前ではそんなことおくびにも出さないが、
影でしっかりと邪魔者は削除していく奴だ。
今までアリシア姫に近づいた奴は確実にレインの手によって削除されているのだろう。
ほんと、何と言っていいのやら………
ただの莫迦か……はたまた天才故の考えなのか………
「ま、天才と莫迦は紙一重って言うしな」
ルイスはクツリと笑いながら水晶から目をそらす。
その視線の先には満面の星空が広がっている。
きっと明日は晴れだろう。
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