水面下の花びら   4









「えーもう帰っちゃうの?アリシアちゃん」





淋しいわ…などと心にも思っていないことを言っているのは
レインの師匠、ローレシア・フィスティーラだ。


まったく…淋しいじゃなくて、遊び相手がいなくなるからつまらないって意味だろう。
多分、遊ぶ玩具が無くなるのと同じような感覚で言っているに違いない。


思わずアリシアが冷たい視線を送ると、ローレシアは楽しげに笑った。
本当、食えない人だ。


アリシアは頬を膨らませると言った。






「おかげさまで元の姿に戻れましたし、もうここにいる意味もありませんからね」






寧ろまたローレシアの脱走に巻き込まれそうで恐ろしい。
そんなことを思っていると、ローレシアの後ろからひょこっとミランナが顔を出した。
その顔にはやさしい笑みが浮かべられている。





「淋しいわね……アリシア姫がいなくなっちゃうと。
折角娘が出来たみたいで嬉しかったのに……」






でも、またすぐに会えるわね。
と、呟くミランナにアリシアは笑いながら頷く。


結婚式を挙げるときにどうせ会える。
そんなことを笑いながら思っていると、
レインの友達でもあるルイスがニヤリと笑いながら言った。






「レインがまたなんかしたら教えてくれよ?そんときは力を貸すからよ。
どうやったらレインを懲らしめられるとかな。
ま、これでガツンと頭を叩くのが一番効果てきめんなんだけどな」




「オイ」




「ん?だって本当のことだろう?」






寧ろ水晶玉の方が割れそうなことなんて何回もあったしね。
と、ケラケラ笑うルイスに流石に身の危険を感じるレイン。
何でこんなのと友達なのか未だに不思議だ。




青ざめながら笑うスイスを見るレインに
アリシアは吹き出しながらも見送ってくれる人達を眺める。
この島にやって来てからいろんな事があったのを感じる。









――――――殺され掛けたりしたときもあったが、今ではいい思い出だ。








「あら、船がもう出発するみたい」





ミランナの言葉にアリシアとレインはその場を後にし、船に乗り込む。
そして見送りに来てくれた人々に大きく手を振った。




「みんなー招待状送るから絶対来てよー」




「楽しみにしてるわーアリシアちゃんvv」



「ぜひ招待してねー」



「俺のも忘れるなよー」





次々に声が飛んでくる。
その言葉を聞きながらアリシアは精一杯手を振る。


ゆっくり動き出す船…………
これから向かう先は懐かしきクロレストラ王国だ。











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