水面下の花びら   2









どうして好きになってしまったのだろう?
答えなど幾ら考えたって出てこない。
でも、これだけははっきりと言いきれる。





理屈とか、そんなんじゃなくて……好きになってしまったんだ。





優しく笑いかけてくる彼に心を奪われてしまったんだ。
最初は自分に寄り添ってくる輩と同じだと思っていた。
でも……それは違ったんだ。
けど、私は認めたくなくって………





「もう、本当……こんな私の何処が好きだっているの?あんたは…
我が儘で、ちょっとしたことですぐ泣くお姫様だって言うのに……」





「………アリシア姫?」





「でも……どうしてなんだろう、こんなにも………
いつの間にかこんなにも好きになっていたんだもの。どうしようもないじゃない!」






後ろから優しく抱きしめてくるレインの腕を掴みながらアリシアは叫ぶ。
嫌だ、こんな事言いたかったんじゃないのに……
口から言葉がことばしる。




「でも…気づいたときには――――」




知らない女性とともにいた。
珍しい赤髪の女性……とてもその女性は綺麗で………



敵うわけないと自分でも分かった。
だから婚約解消までしたのに…………




「どうしてそんなに私に関わるのよ!!」





「そんなの決まってるじゃないですか、好きだからですよ…貴女が誰よりも」




「―――――――っ……」




「誤解をしているようですが、あの赤い髪の女性は
ラファエル王国の第一王女エリス・ハンブルク姫です。
フェイル王子の第一王女ですよ」




「――――――え?」





「極端に一目を気にしますからなかなかああいった場所には出てきませんから
あまり知らない人が多いですけどね。ただ、挨拶をしていただけでそれだけです。
誤解をさせるような行動をとってしまってすみません、アリシア姫」





「………………」




「でも、少し嬉しかったです。私に少しでも嫉妬してくれたんでしょう?」





「なぁ………////」




「大丈夫です。もう嫌だって言っても離しませんから」







それにアリシア姫の口から好きだって聞けましたしね。
と、嬉しそうに笑うレインに更にアリシアは真っ赤になる。
だが、いつもなら暴れるはずのアリシアは暴れない。
恥ずかしそうに大人しくしている。


そんな様子がとても可愛らしくて…………



レインはクスクス笑うと顎に手をあてがう。
そして言った。





「もう二度と離しません」





ゆっくり二人の影が重なる。
それはまるで今の二人の心を表しているかのようだった。






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