素敵な晩餐会   3









「ねぇ、あとどのくらいやればいーの?」




気の抜けた声を出しながらローレシアは目の前にある書類に印鑑を押していた。
仲間に捕まった後、ローレシアはアルテイルスの中心部でもあるここ、
責任者が仕事を処理するための執務室に座らされていた。理由は至って簡単。
今までサボってきた分の仕事が今、一気に回ってきたのだ。



案の定、ローレシアはうんざりした様子で書類に目を通すと印鑑を押していく。
寧ろめんどくさそうだ。
そんな様子にローレシアを無理やりこの部屋へ連れてきた男が言った。



「お前な、そんだけサボっておいてめどくさいもないだろうが」




仮にもお前はこの国の最高責任者なのだぞ?
と、呟かれた言葉にローレシアはチラリと男を見るが、
再び書類に視線を戻し印鑑を付きながら言った。




「簡単に言うな。私は最高責任者などなりたくてなったわけじゃない」


「だが、国民はお前を選んだ」



「それはこの中で私が一番強いからだろう?それに私は政治をするようなタイプじゃない」




寧ろ気ままに過ごす方だ。と、呟くと再び書類に目を通し、印鑑を押し続ける。
確かにその通りだろう。
現にこの女は仕事が嫌になりここから逃げ出したのだから。
だが、国民はそんなローレシアを慕っている。
寧ろそんな姿は彼女らしいと笑い飛ばしたほどだ。
それほどローレシアには人望が寄せられているのに本人は全く気づいたいなかった。





「ま、そんなところがお前らしいんだがな」



「ん?何か言ったか?」



「いいや、何も。それより早く仕事を終わらせろ」



「この鬼が」



「ふん。幾らでも言え。今日はそれが終わるまで帰らせないからな」





目の前で愚痴るローレシアを見つめながら男も目の前の書類の山を少なくしていく。
ふと、男は思い出したかのように言った。




「そう言えばあの女……アリシアとか言ったな。何処の国の姫だ?あれは…」



「クロレストラ王国だよ。ちなみにレインの婚約者」



「ああ、あのレインが夢中になった娘か…どおりで気の強そうな娘なわけだ」




「本人にそう言ったら間違えなくぼこされるよ」



「ふん。そんな簡単にやられるほど俺は弱くない。それよりあの娘……
かなり強いな。魔力の波動が凄まじかったぞ」




どうやらこの男、戦っていたにも関わらずアリシアだと気づかなかったようだ。
ほんと、何と言っていいのやら……




「ま、確かにアリシアちゃんは凄い才能の持ち主だからね」




あの魔力の高さはローレシアも認めるほどだ。
そのアリシアとレインの子どもが生まれたらきっと凄い魔術師になるだろう。




「数年後が楽しみだ」




ニヤリと笑いながらローレシアは楽しげに呟いた。








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