素敵な晩餐会 1
いい香りが台所から漂ってくる。思わずアリシアは瞳を細めた。
こういう風に母親が料理を作っている姿は初めてみる。
ダリアはお菓子などを作ることはあっても、主食になるような料理はけして作らない。
だからこういった感じは珍しいのだ。
興味深そうに辺りを見渡していると、
レインが紅茶を運びながらアリシアが座っているソファーの反対側に座った。
そして紅茶を置くとにっこり笑う。
その笑みがやけに癪に触った。
思わずアリシアが睨み付けると、レインは戯けたように言う。
「どうしたのですか?アリシア姫」
「煩い、私はあんたなんかと話すことはないのよ。
大体何なの?一緒に夕食だなんて…」
「夕食に誘ったのは私ではありません。母です」
「そんなの分かってるわよ」
だから断れずに此処に居るんじゃない。と、頬を膨らませると、レインはクスクス笑う。
その笑みが更にアリシアの苛立ちを煽る。
思わず顔を背けると冷たい表情で言い切った。
「夕食を食べたらすぐに出て行くから安心して」
「……………そうですか」
淋しそうにそう呟くレインに少しアリシアの心が揺れ動く。
何でそんな悲しそうな顔をするの?
私なんていなくても関係ないんでしょう?
それにレインにはあんなに素敵な女性がいるんだかから。
スッと瞳を閉じると、それ以上何も言わなかった。
そんな様子にレインもそのまま見つめる。
ふと、口を開いた。
「アリシア姫……まだ私は諦めてませんから」
「知らないわよ、そんなこと」
「ええ、勝手にさせてもらいますよ」
「…………………」
じっと見つめてくるレインにアリシアは静かに瞳を細める。
一体なんだというのだ。そんな視線を向けられても……
その時、神の助けか否か、ミランナがにっこり笑いながら台所から出てきた。
その手には数々の料理が乗せられている。
えーと……
「アリシア姫がいるから今日はいっぱい作っちゃったvv
たーくさん食べていってね」
「は、はぁ…………」
とても考えられない料理の量。到底三人で食べられる量ではない。
これを食えと言うのか?
当のレインも頬を引きつらせて目の前のミランナを見ている。
そんな目をしても現実は変わりませんよ?レイン……
再びアリシアは料理に視線を戻すとため息をついた。
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