海の底の一騒動 4
ゆったりとした空間にアリシアは何もすることが無く、ぼんやりとしていた。
こう言うときに限ってする事が無くて暇だ。
アリシアは近くにあるソファーに座りながらそんなことを思った。
セイレーンの攻撃を受け、船は一時停止状態にあったが漸く今し方動き始めたところだ。
この調子なら二日後には無事アルテイルスに着けるだろう。
安心した様子で寝ころんでいると、ふと、ローレシアがワインを口に含みながら言った。
「そう言えば……アリシアちゃんってさ、食べたら美味しいのかしら?」
「は?」
「また何を言い出すんですか。ローレシア様」
突拍子も無い言葉に思わずアリシアはあんぐり口を開き、
ロードスは呆れたように首を振った。
だが、本人は大真面目だ。ただ主語が抜けてしまっただけで‥……
本人もそれに気づいたのか、訂正し直す。
「そう言う意味じゃなくてさ……あのセイレーン達言ってたじゃない。
魔力があってとても美味しそうって。
だから魔物にとっちゃアリシアちゃんは美味しい餌なのかと思って」
「サラッと酷いこと言わないでよ」
思わず抗議の声を上げるアリシア。
だが、ローレシアは笑みを浮かべるだけでそう思わない?と、言ってくる。
もはやロードスは呆れて何も言わない。と、言うか無視している。
「だって…そう思わない?ロードス」
「思いません」
キッパリ言い切るロードスにつまらない男ね。と、ローレシアは瞳を細めた。
あんたが可笑しいんだろう。と、言う突っ込みはしない。
いや、そもそも………
「そんなこと言ってるとレイン様に会ったとき八つ裂きにされかねませんよ」
「大丈夫。幾らあの莫迦でも此処にいるのは分からないでしょうし、
防音対策もバッチリしてありますから。幾ら魔法で覗こうとしても見れないよ」
楽しげにそう言いきるローレシアにそうですか。と、曖昧に相づちを打つロードス。
その顔はいささか呆れ気味だ。
そんな会話をしているうちにアリシアは眠くなってしまったのか、
ソファーの上で寝てしまった。
こういう姿を見るとまだ子どもなのだな。と、実感させられる。
ローレシアも瞳を細めたまま、何も言わずにワインを口に運ぶ。
まだまだ波乱がありそうな海の旅。
何とか乗り切れるんだろうか?などと思いながらロードスは宙を眺めた。
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