海の底の一騒動 3
「もしかしてさ、私って海が汚くなった腹いせに食われそうになっていたの?」
アリシアは先程の会話を思い出しながらそう呟く。
確かにローレシアはそう言った。
あのルーナというセイレーンに向かって。
だとしたらあまりにも理不尽だ。
ふてくされた様子のアリシアにローレシアは船に乗り込みながら言った。
「あら、今更気づいたの?遅いわね」
「やっぱりそうだったんだ」
てか、それ以外ないだろうと言われてしまえばどうしようもない。
膨れたように頬を膨らますアリシアに
ローレシアは冷たい視線を投げかけながら言った。
「アルテイルスに行くまでもう部屋の外に出ちゃ駄目だからね」
「えぇ!!」
にーこり、笑顔を浮かべながら言いきるローレシアに不満たらたらのアリシア。
だが、ローレシアは更に笑みを深めると、
そのままズルズルアリシアを引っ張っていく。
どうやら拒否権はないらしい。
「あんたのせいで私のゆったりとした時間が
奪われるのは嫌だから見える範囲に隔離しておく」
「何それ!!」
「だって、そうでしょ?あんなセイレーン達に捕まっちゃって。
それを助け出したのはだーれ?」
「う……」
「そう言うこと。文句は言わせないわよ」
キッパリ言い切るローレシアに流石のアリシアもタジタジ。
怖い、メッチャ怖すぎる。
この何とも言えない微妙な笑みがまた怖い。
思わずカラ笑いを浮かべるアリシアにロードスは苦笑した。
今のローレシアに歯向かおうとする者は滅多にいない
いるとすればレイン様だけだ。
「ロードスぅぅ〜」
案の定助けを求めてきたアリシアに
ロードスは諦めて下さいと言うとがっくりとした様子で俯いた。
そしてそのままアリシアは部屋へと連れて行かれた。
中は貸し切りのせいか、やたらと豪華に見える。
アリシアも驚いたように周りを見渡すと言った。
「すごーい。何?アルテイルスに行くまでこの部屋でずっと過ごすの?」
「そう言うこと。寝るなり、ロードスを虐めるなり何でもどうぞ」
あ、私のくつろぎタイムを邪魔したら即処刑だけどね。
笑顔でサラリと脅しをかけるローレシア。
アリシアは全力で頷いた。本当にやりそうで恐ろしい。
それにしても―――――
「選択肢の中にロードスを虐めて良いって選択無かった?」
「ええ、ありましたね」
私もしっかり聞きました。
と、ロードスは冷たい視線をローレシアに投げかけながら言った。
だが、当の本人は気にした素振りも見せず、ワインを開けている。
本当にマイペースな人だ。と思ったのは秘密。
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