海の底の一騒動  1









此処は何処だろう?
目を覚ましたアリシアが思ったことはそれだった。
どうやらベッドらしき物に寝かされていたのだが、特に拘束されている様子もない。
てか、何で息が出来るの?
アリシアが不思議そうに首を傾げているが答えは全く分からない。
とりあえず此処が何処だか分からない限り話にならない。



ふと、窓らしき物の外には魚が泳いでいた。
そう、色とりどりの魚たち……どうやら本当に海の中のようだ。
地上に魚が飛んでいたら逆に怖い。





「綺麗だなー」





アリシアは暢気にそう呟くと、窓にへばりつく。
此処に連れてこられた目的を忘れているかのようだ。
ふと、その時誰かが言った。





「貴女、もうすぐ食べられちゃうかもしれないって時に暢気ねー」



「はい?」




アリシアはクルリと後ろに振り返るとそこには
自分を美味しそうと言いながら連れ帰ったお姉さんが立っていた。
アリシアはその姿を見た瞬間、船で合った出来事を思い出す。
そう言えば……





「あの船はどうなったの?」


「船?ああ、襲った船のこと?」



「そう。まさか沈没なんかさせてないわよね」


「知らないわ。他のセイレーン達に餌としてあげちゃったから今頃死んでるかもね」


「あ、それなら多分大丈夫かと………」





思う。と、言おうとした瞬間、建物が大きく揺らぐ。
まるで嵐が襲ってきたかのような感覚だ。
だが、先程まで晴れていたのに嵐が来るはずもなく……




「何事なの!!」




そう叫んだセイレーンに対し、にっこりと笑みを浮かべたローレシアが現れた。
が、目が笑ってないだけに恐ろしい。
思わずアリシアも息をのんだ。



「見ーつけた。アリシアちゃん発見。心配させんなよこのボケ姫」



「えぇ!!何よーそのボケ姫って!!ちょっとローレシア性格変わってない?」



「ううん。これが元々だから。口悪くて当然よ。じゃなくて早く帰るよ」




「へ?」



「あ、それとも此処で餌になりたいの?セイレーン達の」


「……………もしかしなくても助けに来てくれたの?」





驚いた様子のアリシアに対し、ローレシアは呆れたように顔に手を当てると言った。





「それ以外に何があるのよ。じゃなきゃこんな辺地までやって来ないに決まってるでしょ」




まるで莫迦にされたような言葉。
だが、アリシアは感動したようにありがとう!と叫んだ。








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