海の歌姫セイレーン   4









「アリシア!!」



ローレシアがそう叫びながらやって来たときには既にそこにはアリシアの姿はなかった。
そのかわりその場にいたのは人間を食らうセイレーンの姿。
油断していた……まさかこんな所にセイレーンが現れるなど考えもしなかった。



思わずローレシアは舌打ちをすると、
人間を美味しそうに食べているセイレーンに向かって魔法をかける。
その途端セイレーンの身体が燃え上がり、その場にもがきながら倒れ込む。
そして跡形もなく崩れ去った。
凄い威力の炎だ。




ローレシアはにっこり笑いながら残りのセイレーンに向かって言う。





「さーて、此処にいた女の子を何処にやったのかしら?」




いや、脅しにも近い言葉だった。
案の定、残りのセイレーン達は驚いたように後ずさる。
が、ローレシアがそんなことを許すわけもなく、一歩近づくと怒ったように言った。




「アリシアを何処にやったのよ。まだ食べては居ないはずよ。死骸が転がってないから」


「ローレシア様………」



「あら。本当の事じゃない」




ロードスの言葉にローレシアはしれッと答えると、再び残りのセイレーンに向き直る。
表面上は笑顔だが、目が全く笑っていない。
ローレシアはもう一度言った。




「アリシアは何処?答えないと言うのなら……
世界最強の魔女と詠われる私が貴女達を灰にしてあげる」



「あ、あの娘なら……ルーナが連れてちゃったわ………」



「ルーナ?」



「そ、そうよ。セイレーンの長のルーナよ」




「ふーん。じゃ、その場所に連れていってもらおうかしら?」



「え?」




「嫌とは言わせないわよ」






にっこり笑うと有無を言わさぬ口調でローレシアは言った。
流石世界最強の魔女と言われることだけはある。
その笑顔も恐ろしい。


そんな笑顔になれているのか、ロードスが小さくため息をついた。




「そんなこと言って……大変な道を選びますね……」



「だって、此処でアリシアを助けなかったら後でレインに殺されちゃうわ」



「確かに……あの溺愛ぶりは異常ですからね」



「そーいうこと。じゃ、さっさと連れて行け、お前達」



「ひぃ!………は、はい」





ローレシアに脅され、怯えたようにセイレーン達は海に潜っていく。
ローレシア達もその後に続く。
海の底はとても冷たかった………










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