港町ルーバン 2
「アリシアちゃんって苦手だったんだ……船」
ニヤリと笑うローレシア。その笑顔が癪に障ったのは言うまでもない。
ムッとした様子で睨み付けるアリシアをさらりとかわすと、ローレシアはあからさまに笑った。
「何か子どもみたいね〜アリシアちゃんって。て、今は子どもか」
「失礼なこと言わないで!!」
「だって、本当の事じゃない。あ、それとも今すぐ死ぬほど船酔いしたい?」
「う゛………」
脅しに掛かってくるローレシアにアリシアは言葉を無くす。
何でこの人と一緒に旅をすることにしちゃったんだろう。
そもそもローレシアが強引に……まぁ、兎に角、旅をすることになって……
「あー嫌だな……」
泣きそうな気分を堪えながらアリシアはそう呟く。
が、その呟きにローレシアはキョトンとした表情を見せた後、大丈夫と笑った。
何が大丈夫なんだか……冷たい目で見ればローレシアは言った。
「大丈夫よ。私が魔法で船酔いさせなくするから」
「そんなこと出来るんですか」
「まーね。なんて言っても私は世界最強の魔女ですから」
「またまた、嘘言って。それ、自称でしょ?」
今度はアリシアが笑いながら言うと、ローレシアが驚いた表情をした後、
悩むような表情をし、言った。
「ま、いいや。そう言うことにしておいてあげる。この世間知らずのお姫様」
そう楽しげに呟くと、ローレシアは船に向かって歩いてくる。
どうやらもう乗るらしい。
重くなる気分を堪えつつ、アリシアはその後ろ姿を追った。
ふと、船の近くで、若い男が立っているのが分かる。
船に乗る客だろうか?それにしては何とも貧弱そうな………
そんなことを考えていると、男がクルリとこっち見た。
と、同時にローレシアが嫌なものを見たかのように顔を顰める。
本当に嫌そうだ。
そして、目の前までやって来た男に向かっていた。
「お前か、私がクロレストラ王国に居るって報告した莫迦は」
てっきりレインかと思っていたのに……などと呟きながらローレシアは目の前の男を見る。
やはり若い男だ。青い髪に金色の瞳。貧弱そうなのにどことなく強い雰囲気を感じられて……
なんだかレインみたい。と、呟くと、男は微かに目を見開いた後言った。
「これはこれは……アリシア姫ではないですか。
私はローレシア様の護衛を務めるロードスと申します」
「ロードス?貴方も魔術師なの?」
「ええ、魔術師です。ですが、レイン様には劣りますけどね」
と笑いながら言う男はとても謙虚に思えた。
あのレインがそこまで強うとは思えない。寧ろこの人の方が強そうだ。
そんなことを思いながらアリシアは再びロードスを見た。
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