レインを探せ 3
仮装パーティーの夜、レインはアリシアを探していた。
戸惑ったように一人にしてくれと言った彼女を……
人混みの中でも、アリシアならどんな姿していても見付けられる自身はあった。
好きな女性なら尚更だ。
辺りを見渡していると急に名前を呼ばれる。
と、同時に誰かが後ろから不意打ちのように抱きついてきた。
甘い香りと共に真っ赤な珍しい髪が靡く。
その髪の色にレインは見覚えがあった。
「エリス…………姫?」
「はい!お久しぶりですわ、レイン様」
エリスと呼ばれた女性は頬を薔薇色に染め、腕にしっかり抱きついてくる。
確か、昔――――数回会ったことがある王女様だ。
何故か気に入られたらしく、
会うたびに追いかけられてはいたが、こんな所で会うとは…
と、言うか此処は彼女の国か。
と、苦笑ぎみに笑っていると、エリスは嬉しそうに呟く。
翡翠色の瞳がキラキラ輝いていた。
「私、ずっとレイン様に会いたかったんですけど、
なかなか場所が分からなくて困っていたところでしたの。
レイン様、私と結婚なさってください!!」
「―――――――え?」
「私の気持ちは前に伝えたとおりです。ですから…ね?」
「いや、そんなことを言われましても……私には既に婚約者が居ますし……」
「婚約者?誰ですの?それは……」
婚約者と聞くと、急にエリスの顔が厳しくなる。
これが女の嫉妬というヤツか。内心恐ろしいと、思いつつも肯定する。
「クロレシア王国の第二王女……アリシア姫ですよ」
「アリシア姫?だって、あの子はレイン様のこと嫌っているじゃないですか」
「ま、そうなんだけどね‥………」
流石のエリスもアリシアのレイン嫌いは噂に聞いているのか、綺麗な眉を顰め呟いた。
確かにその通りかも知れない。
だが――――――
「私には彼女しか見えてませんから」
本人が聞いたら気絶してしまいそうな台詞をさらりと告げるレイン。
だが、此処で引き下がるようなエリスではなかった。
綺麗な顔をレイン近づけ言う。
「それでしたら私はレイン様のことがアリシア姫が思っている何倍も好きですわ。
私はレイン様しか見えてませんの。レイン様しか結婚するつもりはありませんから」
「エリス姫……」
その言葉に内心困るレイン。
普通の女達だったら此処で引き下がるが、さすがは一国の王女。
こんな所で引き下がるような性格の持ち主ではなかった。
どうしたら良いかと迷っていると、
誰かに見られているような気がし、視線をそちらに向ける。
そこには冷たい眼差しでこちらを見ているアリシアが居た。
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