レインを探せ 2
「すみませんが、いい加減その手を離して貰えないでしょうか?」
なるべく押さえた様に言うレイン。
だが、腕に絡みついた女は離れるどころか更にきつく抱きついた。
その様子に思わず、ため息をつくレイン。
事の始まりは仮装パーティーのあった日の事だった。
まさか変装している姿で一発でばれるとは思わなかったのだ。
その点ではアリシアより誰よりもレインのことが好きだというのは目に見えて分かる。
だが、レインが好きなのはアリシアなのだ。
しかも婚約者だし。この人とは一緒になれないと言うのに……
「お願いですから分かって下さい、エリス姫………」
「嫌ですわ。あんな女なんか諦めて、私と結婚して下さい、レイン様」
「…………………;;」
エリスと呼ばれた女性は腕を絡め、口を尖らせながら言う。
その姿はとても可愛いのだが―――――
「私には婚約者が居るんです」
「あんなにレイン様を嫌っていらっしゃるのに?」
「それは―――――」
「でしたら私も同じです。私もレイン様が好きなんです。一緒にいることは駄目なことなのですか?」
翡翠色の瞳を潤ませ、見上げてくるエリスにホント、レインは困っていた。
このまま本当は逃げたいところなのだが、
腕をしっかり掴まれているため、それもできない。
空間移動しようとしても、腕を掴まれていると、
その人まで一緒に移動してしまうため、それも駄目。
逃げ道がない状態に思わずため息をついていると、扉が開き中に誰かが入ってきた。
その姿を確認すると、レインは困ったように相手に問いかける。
「助けて下さいよ……フェイル王子」
「うーん。助けたいのは山々なんだけど……そんなコトして後で殺されるの俺だし?」
やっぱ、一番は自分の命でしょ。
と、言い切るフェイルにため息が出たのは言うまでもない。
そう、エリスはフェイルの妹君。
ラファエル王国の正式な第一王女なのだ。
だが、あまり人前に出てこないため、その存在は忘れられがちだ。
尤も外見がブスだから出たくない。などという理由ではない。
髪の毛の色に彼女はコンプレックスを持っていたのだ。
赤い髪というのはかなり珍しい事で、世界中探そうとしてもそうそういない。
そのため、人前に出て目立つようなことをしたくないのだ。
そんなとき、レイン似合い一目惚れ。
完全に心を奪われたエリスはこうしてレインにずっとくっついているのだ。
一国の王女を無理やり引き剥がすわけにも行かず、困ったようにため息をつくレイン。
今にも死にそうなのは誰の目から見ても明らかだ。
アリシア姫……勘違いしてなきゃいいけどな………
レインは仮装パ−ティーの日にあったことを思い出し、瞳を伏せた。
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