謎の美女 1
次の日、何時になく慌ただしい城を抜け出し、
アリシアは次の町へ行く準備をするため町の方へ買い物に来ていた。
今回は今までとは違い、
海を渡らなければ行けない魔法都市アルテイルスに用事があるのだから。
一通り、買い物を済ましたアリシア。
ふと、思い出したかのように歩いていた足を止めると方向転換し、人通りの少ない道へ行く。
そう、お馴染みの洋服屋に行こうと思ったのだ。
「そろそろ服もボロボロになってきたし、新しいのを買っても良いよねー」
一人呟くとそのまま店に向かう。
だが、着いたときアリシアは驚いたように目を見開いた。
そう、店の扉は固く閉ざされ、古い壁紙が張り付けられていたからだ。
そして大きくそこには書かれていた。
『店は閉じました』
とてもシンプルな内容だが、理由は一切書かれていない。
開いた口が塞がらないとはこの事だ。
まさか店が閉じているとは考えもしなかった。
困ったように首を傾げていると急に声を掛けられる。
驚いたようにそちらを見れば見たこともない女性が立っていた。
亜麻色の長い髪に赤い瞳、綺麗に整えられた眉は強気な感じをイメージさせる。
化粧は控えめで、殆ど下地程度。
うっすらと塗られた口紅が艶やかで大人の女性をイメージさせた。
二十代後半ぐらいだろうか?
まだ三十代はいっていないような気がする。
アリシアは暫く目の前の人物を呆然と見ていたが、漸く言葉にする。
「あのーどちら様でしょうか」
「え?ああ、この姿だからわからないのか。
私、前までこの店の主人だった者って言えば分かる?」
薄い笑みを浮かべる女性にアリシアはえ?と、眉を顰めた。
前の店の主人と言えばあの優しそうな‥…優しそうな………
「もしかしてあのお婆さん?」
「ピーンポーン大正解」
よくできました〜と、子ども扱いされたのはむかつくが、今はどうだって良い。
それよりもこの超絶美形のお姉さんがあの老婆だったと言うことに疑問を感じた。
「もしかして変装してたんですか?」
「そうなんだよね。私さーあるところではちょっと有名人でね……
煩く騒がれるの嫌いだから此処に避難して身を隠していたんだけど、
ちょっと莫迦な弟子が場所をばらしちゃってねー見つかっちゃったから故郷に戻ることにしたのよ」
「へー」
「そ、魔法都市アルテイルスね」
「そうなんですか、魔法都市アルテイルスにね……て、アルテイルス!!?
……………もしかして、お姉さん、実は魔術師なの?」
「そうでーす。て、言うか私の場合は魔女だけどね」
さらりと凄いことをいったこの女性。
もしかしてこの魔法を解けるかも……アリシアは内心期待しながら目の前の美女を見た。
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