決意の瞳   1









シンとした雰囲気の中、アリシアはジッと何かを考えて居るかのように前を見ていた。
その顔からはいつもの笑みは見られない。
真剣な表情でダリアが前に座るとアリシアは漸く口を開いた。
この部屋には二人しか居ない。
シリアお姉さまやゼバイルお兄さまには聞かれたく無かったからだ。




「率直に言います。レインとの婚約を解消していただけるでしょうか?」


「―――――レイン君との?」


「はい。私二度とレインとは関わりたくないので……これで終わりにしたいんです」


「理由は?理由がないのにアリシアがそんなこと言う分けないでしょう?」




アリシアの言葉に一瞬驚いていたダリアだったが、再び真剣な表情に戻ると呟く。
その瞳はしっかりアリシアを捕らえていた。


アリシアはその瞳を見ると悲しげに笑いポツリと呟く。
それはアリシアの本心とも言える言葉だった。




「疲れたんです、彼奴に振り回されるのも、追いかけ回すのも……
私は何時までこんな子どもの姿で居なければならないのですか?
レインを追いかけていても何時までたっても元には戻れませんし…
それなら自分の力で魔法を解ける人を捜し、元に戻ろうと思いまして。
ですからお母様、婚約破棄を了解して貰えないでしょうか?」




「アリシア……」




「何と言われようとも私の心は変わりません。
――――で、お母様どうでしょうか?婚約は破棄させてくれるでしょうか?」」



「………………」






その言葉に一瞬ダリアは黙り込む。
何がそこまでアリシアを怒らせたのかは分からないが、
かなり切れているのが分かる。


そう、もうあのアリシアがシリアなどと同じくらい黒く見えるなんて……




何かあったに違いない。
全く……何と言っていいのやら……





「分かりました。レイン殿には私から伝えておきますね。
それからアリシア……元の姿に戻すと言っても何処に向かうつもりですか?」



「魔術師がいる魔法都市アルテイルスに行こうと思います。
あそこならきっとこの魔法も解ける人もいるでしょう」






漸くここに来てアリシアが笑うと、ダリアもゆっくりと微笑む。


それにしても―――――


随分とまた嫌われたモノだ。
今まではそれほどでもなかったとはいえ、今回は酷すぎる。


一体何があったのやら………
ダリアは密かにため息を付いた。








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