仮葬パーディー 5
「ちょっと…腰の手は何なのかしら?」
「気にしないー気にしないー、男が女性をエスコートするのは当たり前でしょ?」
アリシアの苛立った呟きに、シリアはにっこり笑いながら答える。
もう、その笑顔と言ったら……殴りたいほどむかつく!
いっそのこと撲殺でもしようかしら?
と、物騒な事を考えつつも、ふと、前を見ると見慣れた顔が此方に来るのが分かった。
ゼバイルとフェイルだ。
こうやって改めてみると二人とも整った顔立ちをしているのが分かる。
灰色がかった黒色の髪はいつにもまして艶やかで、男とは思えないほど綺麗な髪だ。
自分の髪とは似てもにつかないような気がする。
透き通るような灰色の瞳は真っ直ぐと前を見据えている。
強い意志が通った瞳だ。
格好いい男の人の雰囲気を出している。
一方のフェイルは男の人なのに華奢で格好いいより綺麗に分類される男だ。
しいて言えば女ぽくって綺麗、と言った感じか。
しっとりとした亜麻色の髪に宝石のような翡翠の瞳。
女の人より白い肌はとても綺麗だ。面皰一つない。
う、羨ましい………
女であるアリシアですらそう思ってしまうほどだ。
て、そんな変なこと考えている場合じゃなくて!!
ギャア!!二人とも何か知らないけどこっちに来ちゃってるよ!
心の中で叫びつつもアリシアは何食わぬ顔でシリアを横目で確認する。
やはり楽しそうだ……
満面の笑みを浮かべているシリアにこれ以上言うことはないとアリシアは口を閉ざす。
兎に角、この姿なのだからばれることはない。
そう、幾らゼバイルお兄さまが鋭い人でもだ。
この変装は完璧なのだから………
それはシリアも感じているのか、余裕そうに構えている。
ふと、人混みをかき分け、目の前までやって来た二人に視線を送ると
シリアはにっこり笑った後、お辞儀をした。
「これはこれは…ゼバイル様とフェイル様ではありませんか。
お目にかかれて光栄です」
恭しく頭を下げるシリアにアリシアもマネをする。
笑いそうになるのを必死に堪えた。
「それで、何用ですか?この様な私達に?」
笑みを浮かべるシリアはとても格好いい。
まるで女とは思わせないような演技ぶりだ。
流石に此処までやる人だとは思っても見なかったが……
ふと、ゼバイルの視線が此方に向くのが分かった。
至近距離で見られるのは恥ずかしいが、避けようもない。
思わずなんですか?と聞くアリシアにゼバイルは首を傾げた後言った。
「何処かで会ったことがないか?」
ギクリ。
思わずその言葉にアリシアは冷や汗を浮かべた。
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