一人っきりの旅   4








「相変わらず此処は変わらないんだな」



ポツリと感想を漏らすゼバイル。
その眼孔には華やかな町並みが並んでいた。



だが、その瞳は既にある物を探し始めていた。




「やはり、この辺には居ないか」





流石に入り口付近には居ないのか、ゼバイルは一通り辺りを見渡すと一歩進む。
だが、その足は数歩進んだ所で止まった。


他でもない、この国の王子が其処にはいたのだから。




「珍しいな、こんな所にまでお前が出迎えに来るなんて…」



「いや、客人をもてなすのは当然のことだ。それより――――シリア姫は?」



「…………やっぱりそうか。シリアは今日は来ないぞ」



「!!?何故だ?何処か悪いのか?」



「……詳しい話は後でする。それより……こっちの方にアリシアが来なかったか?
もう既にこの町に居るのは分かっているんだが……」





真剣な口調に一瞬フェイルは顔を顰めた後、思い返している。
が、アリシア姫の姿など見たこともなく‥……




「気のせいではありませんか?」




瞳を細めると、そう言った。
だが、ゼバイルはその言葉を聞くと、思い出したかのように付け足す。




「じゃあ、十歳前後で黒い髪に薄ピンクの瞳をした女の子をみなかったか?」



「十歳前後の女の子………ああ、その子なら男共に絡まれていたので助けましたが?」



「で、その子は何処に!!」



「いえ、助けたらあっという間に逃げられましてね。何処にいるのかまではわかりませんよ」





暢気に答えるフェイルにゼバイルはため息を付くと言った。




「それ、実はアリシアだったんだ」


「は?」



「とにかく歩きながら話すから聞いてろ」


「……………」





それからゼバイルはこれまでの経緯をフェイルに話す。
そして、神妙な顔持ちをしたフェイルが呟いた言葉はこうだった。





「莫迦ですか?」



「お前だけには言われたくねぇ……」



「ま、とにかく今は一刻も早くアリシア姫を捜さなければ……
それにその話だとレイン殿もこの町に居るみたいですし、二人を早く捜しましょう」



「そりゃそうだが……簡単に言うなよ」





こんだけ広いのにどうやって探すんだよ。
と、呟くゼバイルにフェイルはにやりと笑った。





「此処は頭を使わないと……」



「……………………」




いま、思いっきり莫迦にされたのは気のせいだろうか?

此奴性格悪いよな。
などと内心ゼバイルは思った。












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