一人っきりの旅 3
「それより、王子はこんな所で何をしていらっしゃたのですか?」
アリシアは話を逸らそうと、思いつく言葉を言ってみる。
フェイル王子は人懐っこい優しい笑みを浮かべると答えてくれた。
「今日はクロレストラ王国から客人が来ることになっていてね、
ひっそりとこうして迎えに来てみたら君が目に入ったと言うことさ」
「そ、そうでしたか。有り難う御座います、おかげで助かりました」
「いいや、これもこの国の王子である俺の役目でもあるからね」
にっこり笑いながら言う王子に一瞬見取れたアリシアだったが、
こんな事をしている場合じゃないと考え、ぺこりと頭を下げると礼を告げた。
「とにかく有り難う御座います。私は人を捜して居るんでこれで」
「あ……」
「さようならー王子」
フェイル王子の返事を聞かないうちにアリシアはその場からずらかる。
これ以上此処にいたら何がばれるかわかったものではない。
最後の方で何か言っていたような気もするが、この際其処は気にしない。
とにかくアリシアはその場から全力疾走で逃げた。
一方のフェイル王子は何故あんなに少女が必死で逃げるのか理解できなかった。
「ただ名前を聞いておこうと思ったのに……」
そんなことを思うなんて珍しいと内心自分でも思った。
普段、町の人々を助けても其処まで気にしたことはない。
だが、あの少女は何故か気になったのだ。
「―――――ああ、小さい頃のアリシア姫に似ているのか」
思わずそう呟くフェイル王子。
あの黒く長い髪、透き通るような薄ピンクの瞳。
だから、そんなことを思ってしまったのだ。
それにしても………
「あんな小さな子がアリシア姫に見えるなんて…どうかしてるな」
最近アリシア姫に避けられているような気がするせいが、そのせいだろうか?
フェイルは一人苦笑した。
「あー、危なかった…それにしてもさっき
何か大切なことを言っていたような…気のせいか」
特に気にした様子もなく歩き出す。
だが、アリシアは聞き逃していたのだ。
クロレシア王国から客が来ると言うことを……
「アリシアの奴、待ってろよ。絶対捕まえてやるから」
そう、ラファエル王国の前でそう呟いているゼバイル居ることを。
アリシアを探しに来たことを……
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