一人っきりの旅 2
アリシアは親切な青年の言うとおり、裏通りに向かって歩いた。
が、其処は誰もおらず、淋しい感じの場所だった。
「本当に此処で合ってるのかしら?」
アリシアは少々不安に思いつつも先に進む。
ふと、突然後ろに誰かの気配を感じ振り向く。
其処にはいかにも怪しそうな男達が佇んでいた。
五人ぐらいだろうか?
「何のようですか?」
アリシアは瞳を細めると怪しい男達を見る。
何処にでも居そうな感じの男達だ。
しっかりとした口調で喋るアリシアを莫迦にしたように男達は笑う。
「おい、このチビ結構気が強いぜ。
しかもなかなか可愛いから売れば結構な値段になるな」
「チビ……売るですって……!!」
男達からはっきり聞こえた言葉にアリシアは憤慨する。
これでも十八歳の乙女に向かってチビと言うとは……許すまじ発言。
怒りのあまり震えていると何やら勘違いした男が言った。
「おい、此奴震えてるぜ!」
「ホントだ。情けねえなぁ……………?」
次の瞬間アリシアはにっこり微笑みながら言った。
「良い度胸をしてるのは貴方達の方よ。相当死にたいみたいね…
いいわ、お望み通り殺してあげるから」
その手には雷の放った丸い球体が浮かんでいる。
差詰め電気の塊と言ったところだろう。
アリシアは不敵に笑いながら言う。
「これ当たったらただじゃすまないわよ」
氷のように冷たい笑み。
思わず男達はゾッとしたように引き下がる。
が、アリシアはそのまま男達に向けて放とうとしたその瞬間―――――
「そこで何をしている!」
鋭い声が聞こえ、アリシアの身体が止まった。
いや、声を掛けられたから止まったのではない。
その声の人物に聞き覚えがあったからだ。
――――――――――この声は………
「げ、フェイル王子だ!」
「此処は逃げた方が良いぞ」
男達は次々にそう呟くとその場から逃げ出す。
アリシアはそんな様子をぼんやり見ていた。
だが、心の中ではヤバイの一言に限る。
冷や汗をかいたような状態でその場に佇んでいた。
本当は逃げ出してもよかったんだが、それでは怪しまれ兼ねない。
それだけは勘弁だ。
ふと、フェイル王子が目の前まで来ているのに驚いたアリシアは後ずさりをした。
この状況は非常に不味いとアリシアは。
幾らこの格好をしているとはいえ、フェイル王子が気づかないとも言い切れない。
案の定不思議そうな顔をしてこちらを見てきた。
「君……何処かでみたことがあるような………」
「イイエ、滅相も御座いません。今回が初めてです。ハイ……」
「そう?」
ヤヴァイ……何でこんなに勘がいいの今日は?
いつもは信じられないくらい私の気持ちに気づかないのに…
思わず舌打ちをしそうになるが、此処は堪えなければ……
さて、どうやってこの状況を切り抜けようかしら?
目の前に佇むフェイル王子をみながら密かにアリシアは思った。
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