アリシアの憂鬱   3








「くそ、とにかく……アリシアを追いかけなくては……」



ゼバイルは一人呟くと荷物を纏め始める。
その様子を見ていたリーナは心配げに呟いた。



「一体何があったのです?詳しく説明して下さいませんか。
それからです。アリシア姫を捜すのは…」




「………………」



冷静さを失っていたゼバイルだが、リーナの凛とした一言に動きを止める。
そして昨日あった事を全て詳しく話した。


リーナは一言も言わず、その話しに聞きいっていたが、
真っ直ぐとした瞳をゼバイルに向けるとはっきり言った。




「ゼバイル様、アリシアちゃんを絶対探してきて下さいね。
わたくし、それまで待っておりますから。第一、ゼバイル様だけ
元の姿に戻られても、アリシアちゃんが居ないのでは意味がありませんわ。
わたくしはアリシアちゃんにも結婚式に参加してもらいたいのです。
ですから……頼みましたわ、ゼバイル様」



「すみません、リーナ姫……」




「良いんです。どうせ結婚式は延期になることだったんですし、
アリシアちゃんが元の姿に戻ってから結婚式を挙げても遅くはありませんわ。
それより―――――アリシアちゃんをお叱りにならないで上げてね」



「………………」




「年頃の女の子はとても難しいの。特にアリシアちゃんはとっても大変だわ。
だって………とにかく、叱ったりしてはいけませんよ、ゼバイル様」



「………努力します」




リーナの言葉にゼバイルはやっとの事で応える。
怒らない自身などなかった。

突然になくなって、リーナ姫にまで迷惑をかけているのだから……






「それにしても……残念ですわ」






ふと、突然リーナ姫がポツリと悲しげに呟いた。
なんだ?と言わんばかりにゼバイルが見つめるとリーナは言う。





「折角女性になっていらっしゃったのに、こんなに早く元に戻ってしまうなんて…
こんな事だったら昨日のうちにいっぱいドレスを着させておくんでしたわ」



「……………」




今、とてつもなく恐ろしいことを聞いたような気がするが、
聞かなかったことにしよう。



ゼバイルは顔を青ざめながら荷物を纏める方に集中する。
ふと、リーナが良いことを思いついたかのように手を打った。





「そうですわ。今度レイン様に一日だけ性別が変わるお薬を
作ってもらえば良いんですわ」




パァッと花が開いたかのように満面の笑みを浮かべるリーナを
極力見ないようにするゼバイル。


つーっと冷たい汗が背中を流れた。



本当にそんな事が起こりそうで恐ろしい。


一人、はしゃぐリーナ姫を尻目にそんなことを思うゼバイルであった。













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