アリシアの憂鬱   2








全く……やってらんないわ。

お兄さまの莫迦……



闇の中、一人アリシアは歩きながらぼやいた。
まったく、ふざけやがって…



あの後、誰にも気づかれずに城を出たアリシアはひたすら歩き進んでいた。
向かう先はラファエル王国―――――


レインがいると思える場所だ。


だが―――――――





「あまり行きたくない場所よね」




思わずアリシアは一人ため息を付く。
あそこには彼がいる……。

会いたい、でも会いたくない。
会って傷つくのは自分だから……


でも仕方がない。この姿を戻せるのはレインだけしかいないのだから。




「とにかく一刻も早く此処から離れなくちゃ。
あの莫迦お兄さまが追いかけてくるかも知れないからね」




にっこり微笑むとスタスタ歩き出す。
だが、アリシアの纏っている空気はあまりにも冷え切っていた。




余りの恐ろしさにその夜は魔物が襲ってこなかったとか……

















次の日、ゼバイルは再びアリシアの部屋のドアを叩いた。

昨日は言い過ぎたのかも知れない。
だが……………


とにかく謝らなければ。




「アリシア、いい加減此処を開けろ。朝だぞ」



「…………………」




だが、部屋からは物音一つしない。
不審に思ったゼバイルが再びドアを叩くが、開く気配はない。


ドアを開けられればいいのだが、鍵がかかっていて無理だ。
仕方がない、無理やり開けるか……


ゼバイルは数回思いっきり蹴り飛ばすと、すんなり鍵は壊れる。
だが、その部屋の中は既にもぬけの殻だった。




「アリシア………?」




不審に思ったゼバイルが部屋の中を隅々探すが、アリシアはいない。




「アリシア!」



まさか…………

ふと、窓を見れば開きっぱなしで、明らかに其処から出ていったのが分かる。

まさか夜のうちに城を出た?



ありえない…………




ゼバイルは瞳を細めると、アリシアの私物がないか探し始める。
だが、やっぱり荷物はない。



……………やっぱりもういないか……



ゼバイルは自分の部屋に戻ると、荷物を纏め始める。
アリシアを追いかけるためだ。


ふと、その時リーナ姫がゼバイルの声を聞きつけてやって来た。
その表情は驚きに満ちている。

リーナ姫はじーっとゼバイルを見つめると言った。





「ゼバイル様……元の姿にお戻りになりましたのですね。
でも、どうして――――――?」



嬉しそうに呟くリーナを余所に、ゼバイルは焦ったように昨日起きたことを告げた。




「リーナ姫……アリシアを見ませんでしたか?」


「アリシア姫?ですか……今朝は見てませんけど……」



「アリシアの奴、きのうのうちに一人で出ていってしまったようなんです。城から」


「まぁ…ですが何故ですか?何かあったのですか?」




困ったように呟くリーナにゼバイルは言った。



「多分俺のせいだ。俺のせいでアリシアは出ていってしまったんだ」



「え?」





不思議そうに聞き返すリーナにゼバイルは苦しげに言った。













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