アリシアの憂鬱 1 どうしましょう。絶体絶命のピンチとはこの事だわ…… 真剣な眼差しを向けてくるゼバイルにアリシアはカラ笑いをする。 確かにお兄さまの身体が元に戻ったのは良いとしても、 私が戻ってない時点でかなり怪しんでるよゼバイルお兄さま。 どうやって誤魔化そうかしら…… アリシアは端正な顔を顰め、一生懸命考える。 だが、ゼバイルは睨み付けるように言った。 「嘘なんかついたらどうなるか分かるよな?」 ―――――ヒィイイ!! コキコキと手を鳴らすゼバイルはかなり恐ろしい。 ………マジで死ぬかも…… アリシアは遠い瞳をしながらそんなことを思った。 だが、絶対言いたくないのは事実だ。 あんなレインなんかとキ、キ、キスをしただなんて…… 口が裂けても言えない!!! しかもファーストキスだったのに…… もう、泣いて怒りたいのはこっちよ! などと心の中で悪態をつく。 「お兄さま……あの莫迦は何か言ってたけど、本当は何にもなかったのよ?」 「……嘘付け、じゃあ何で部屋に入ったとき、あの莫迦に抱かれてたんだ」 「そ、そ、それは………」 流石、鋭いわ…… どうやって言い訳すればいいのかしら…… 必死で言い訳を考えるアリシアも虚しくゼバイルが止めを刺す。 「それにアリシア……顔が真っ赤になっていたが何かされただろ」 「…………」 「それを条件に俺の魔法を解いたんじゃないのか?」 「―――――っ」 「答えろアリシア」 だんだんむかついてきたのは気のせいだろうか? 畜生!こっちがあのレインに頭を下げて?お願いしたって言うのに…… 何で私が責められなくちゃいけないのよ!! ファーストキスまであのレインにあげたって言うのに!!!! その瞬間頭の中で何かが切れる音がした。 「もう、お兄さまの莫迦!!!私が一生懸命あの性悪魔術師に お願いしたって言うのに何で私が責められなくちゃいけないのよ!! 出ていって!今すぐ………出て行けー!!」 「なっ!お、おいアリシア!!」 「お兄さまは元の姿に戻られたのだからリーナ姫とでも結婚すればいいわ。 私は明日から一人で旅をしますから。それではお休みなさい!」 ゼバイルを部屋の外に追い立てると、バタン!と思いっきりドアを閉める。 そして中から鍵を掛けると、荷物を纏め始めた。 まだ、部屋の外でゼバイルが何か言っているが、知ったこっちゃない。 私はこれから一人で旅をします。 アリシアは荷物を纏め終えると、ベランダから外に飛び降りる。 そして、誰にも気づかれないうちに夜の城を抜け出したのであった。 |