性悪魔術師VSシスコン兄 5 ありえない、ありえない、ありえないー!! だって、だって!!あのお兄さまが剣術で負けるなんて…… 「そんなありえないこと信じられるか!」 思わずそう叫んでしまうのは仕方がないことだろう。 アリシアは呆然と見ていたが、レインの剣がゼバイルに向けられたのに気づいた。 「私の勝ちです」 にっこり微笑むと口元に笑みを浮かべる。 一方のゼバイルはかなり悔しそうだ。 レインに負けたことが相当悔しいのだろう。 顔を下に向け、食いしばっている。 だが、こればっかりはどうしようもない…… レインが剣を消すと同時に空間が歪み、再び元にいた部屋に戻っていた。 まるで何事もなかったかのように部屋には静寂のみが漂っている。 「さて、勝ったことですし…今日はこの辺で引かせてもらいますね」 「……………」 「それではアリシア姫、またお会いしましょう。―――――ああ、 そうでした。次に向かう先はラファエルです。是非追いかけてきて下さい」 「なんで……行き先を………」 アリシアが驚いたように呟く。 わざわざ追いかけている人物に行き先を告げるなど考えられない。 だが、レインは笑みを浮かべるとサラッと言った。 「その方が楽しそうだからですよ。では…」 「あ、待ちなさいよ!」 「次の王国で会えることを楽しみにしています」 「あ………」 次の瞬間にはもう既にレインの姿は見えなくなっていて…… 「また逃げられた…」 ポツリとアリシアが呟いた。 これで二度目だ。こんなに近くにいたのに捕まえることが出来ないなんて… 何か他の手を考えた方が良いのかもしれない。 だが、今はこっちの方が重傷かも知れない…… 「ゼバイルお兄さま、大丈夫?怪我は―――」 「……………無い」 「そ、そう……良かったわね。お兄さま……それで……あの……」 何と慰めればいいのか分からない。 困ったように顔を顰めていると、ゼバイルが悔しそうに床を殴る。 何とも言えない苛立ちがアリシアにも伝わった。 「―――あんな奴に負けるなんて……俺もまだまだってことだな」 「お兄さま………」 「すまない、アリシア…俺がしっかりしなければならないと言うのに…」 「そ、そんなに気にしないで!それよりお兄さま、良かったわね!元の姿に戻れて」 「ああ、それは良いんだが……」 ふと、急に真剣な表情でゼバイルがアリシアにせめよる。 思わずアリシアは一歩引きさがってしまった。 「なぁ、レインと何があった」 「へ?」 「彼奴が言ってただろう。アリシアのおかげだと…何があった」 「あー、えっと………」 くそー自分で墓穴を掘ってしまった。 言うつもりなんて無かったのに!! お兄さまを慰めようとしたら、失敗した…… 自分の莫迦さ加減に呆れつつも、アリシアはカラ笑いをするしかなかった。 |