性悪魔術師VSシスコン兄   3








アリシアとレインが何か言い合いをしている最中、
ゼバイルは再び剣を構え直す。


確かにこの姿に戻れたのにはそれなりの理由がありそうだが今は別に良い。
とにかくこの男を捕まえなければならないのだ…



――――本当は刺し殺したい気持ちで一杯だが…




「さて、お喋りはその辺でやめておいてもらおうか」





ゼバイルはスッと剣を向けると言った。
心なしかその表情は堅い。



だが、レインはいつもの余裕の笑みを見せると振り返る。
だが、その表情は明らかに何かを企んでいる表情だった。



思わずアリシアがゼバイルに逃げるように叫ぼうとするが―――


レインが呪文を唱える方が早かった。



一体何の呪文なのかは理解できないが、
上級呪文でも聞いたことがないような呟きだった。


そして、唱え終わった途端景色が歪み始める。

ゆらゆらと揺れる景色…



アリシアは気持ち悪くなるのを堪えながらその場にひれ伏した。
揺れが収まると其処は既に別次元だった。


何もない空間、と言った方が良いだろう。


まるで無理やり作った空間の中に居るような気分になった。
レインは呪文を唱え終わるとにっこり笑い言った。




「ここでなら思う存分戦えますよ?どうです、ゼバイル殿」



「ああ、そのようだな」




ゼバイルも再び剣を構え直すとレインに向き直る。
その瞳は真剣そのものだった。



まさか、本当にお兄さまレインのことを―――――




思わず顔が強張るのが分かる。
だが、ゼバイルはそんなアリシアの心配を知ってか、安心させるように言った。




「大丈夫だ。殺しはしない、まだお前にかかっている呪いが解けてないからな」


「そう言う台詞は勝ってから言うべきですよ」




レインは手から光の剣を出すと告げる。
どうやら剣で勝負するようだ。

本当に大丈夫なのだろうか?



アリシアはちょっと心配になった。



確かにレインは魔法に長けているかも知れない。
だが、剣術となればゼバイルは最強とも言われているほど強い。
そんな相手に剣で挑むなんて……





無謀にも程が―――――





って、私は何を考えているのよ!



此処はゼバイルお兄さまの心配をしなくちゃいけないのに、
なんでレインのことなんか心配してるの!私……



思わず、一人で赤くなっていると、二人の戦いが始まった。
剣が交わる音が何もない空間に響き渡る。



二刀流のレインに対し、ゼバイルは大きな剣だ。




明らかにゼバイルの方が押しているのが分かる。
力の差は歴然だ。



それでも――――――



この心に抱えている不安をとり除けないのは何故なのだろうか?



レインが密かに笑うのが分かった。










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