性悪魔術師VSシスコン兄   2








「ちょっと!お兄さま私を殺す気!!」



アリシアは目の前で剣を構え直しているゼバイルに、
思わず怒鳴り声を上げる。


レインだけを殺すだけならまだしも、私まで一緒に斬り殺そうとするとは…



「良い度胸してるよね…お兄さま」



にっこり笑みを湛え、ゼバイルを見れば案の定青ざめた様子で一歩引き下がる。


何よ……私はただ、一瞬殺そうかな?って、思っただけなのに…
笑顔でにっこり、怖いことを思うアリシア。

どうやらそれを本能的にゼバイルは感じたらしい。



「とにかく、二人の喧嘩に私を巻き込まないでよね!それにレイン。
あんた…よくもしゃあしゃあと、私を抱きしめていたわね。殺すぞ」



スルリとレインの腕の中から逃げ出すとアリシアは苛立った表情で告げる。
だが、レインは一瞬残念そうな顔をした後、告げた。



「仕方がありません。ゼバイル殿も来たことですし、
今日はこの辺で逃げさせてもらうとしますか…
それに今日は可愛いアリシア姫の一面も見られたことですし……」




耳元でさらりと告げられた言葉にアリシアは頬は真っ赤に染め上げられる。

それは先程の行為を思い出させるには十分だった。
真っ赤なリンゴのようになったアリシアを不審そうにゼバイルは見ていたが、
勝手にづらかろうとするレインをそう、簡単に逃がせるわけもなく、剣を振りかざす。




「そう簡単に逃がすと思っているか?」




ガン、と鈍い音を立て、レインのすぐ側を剣で刺す。
次は当てると言わんばかりだ。



いや、殺されても私の呪いが解けなくて困ることになるんだけどさ。




アリシアは遠い瞳をしながらそんなことを思う。
だが、圧倒的に人ごとのように思っているのは気のせいだろうか。





「そんなので私を殺すおつもりですか?」


「ああ」




挑発するかのように喋るレインにゼバイルは冷静に声を返す。
だが、その視線は今にも殺さんばかりに冷たい光を放っている。


レインは呆れたように言った。




「折角アリシア姫のおかげで元の姿に戻ったというのに…
また戻されたいんですか?」



「―――――アリシアのおかげ?」




その言葉にゼバイルは怪訝そうにアリシアを見つめる。
思わず鋭い瞳にアリシアはベッドの裏側に隠れながら、
レインに向かって文句を言う。





「こら!それ以上言ったら本当に怒るぞ!!」



「そんな隠れながら言われても…あまり説得力がありませんね」



「う、煩い!」




アリシアは頬を赤らめ、キッとレインを睨み付ける。
そして念を押すように言った。




「とにかく……絶対言っちゃ駄目だからね!」



「其処まで言って欲しくないのなら言いませんが…」





少し残念そうに呟くレインをこの時ほど殺したいと思ったことはなかった。
と、思うアリシアであった。










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