それぞれの一夜 3 目の前に広がったのは長い銀色の髪… スカイグレーの瞳がはっきりと目の前に映る。 思わず目の前に現れた端整な顔立ちにアリシアは頬を赤らめた。 後ろに体を引こうとするが、それが出来ない。 レインがしっかり体を支えているからだ。 それにしても彼の顔が少し怒り気味なのは気のせいだろうか? いや、怒っているようにも見える。 思わず冷や汗をかきながら後ろに引き下がる。 レインはいつもの笑みを湛えながら言った。 「全く、魔法が上手くコントロールできないのに良くこんな無駄なことをしますね。 今度魔法を掛けるときは姿を元に戻してからやったほうが良いですよ」 「て、あんたがこんな姿にしたんでしょうが!!」 怒り狂ったように叫ぶアリシア。 幼い顔を真っ赤に染め、頬を膨らまし怒鳴り散らす姿は何とも…… 「そんな姿も愛らしいですね」 思わずそう呟くレインにアリシアは切れた。 堪忍袋の緒が切れた。と、言った方が良いだろう。 ピンク色の瞳を細め、頬を引きつらしている。 だが、完全に目は据わっていた。 今にも殺さんと言わんばかりだ。 そんなアリシアに臆することなくレインは笑う。 「今すぐこの呪いを解け、今すぐによ」 「――――それはつまり…アリシア姫が賭けにまけることになりますが?」 「無条件で解け」 その笑みはとても綺麗だ。 幾ら姿が幼くても、アリシアの美しさは何も変わってなかった。 それがゼバイルにとっては嬉しかった。 だが、そのお願いは叶えられない物だった。 「流石にそれは駄目ですよ。それだけは無理です」 「何でよー!」 「それが賭ですから」 「…………………」 睨み付けるかのように瞳を細めると言った。 アリシアはムッとしながらジトリと睨み付ける。 「――――ねぇ、じゃあせめて…ゼバイルお兄さまだけでも呪いを解いて上げて」 「何故ですか」 静かな言葉にアリシアは顔を背けると言った。 声が震えているのが分かる。 それは心の叫びにも似ていた。 「お兄さまは…もうすぐ結婚が控えているのに… 私のせいで結婚が延長になって…そんなのは嫌なの!」 きっと睨み付ける瞳には涙が浮かんでいる。 「本当はあんたなんかにお願いしたくなかったけど… どうしようもないじゃない!このままじゃ…ゼバイルお兄さまが可哀想……」 その瞬間急に抱き寄せられ、アリシアは瞳を大きく見開く。 急に―――――何? 大きく瞳が揺らぐのが分かる。 それは大きな動揺だった。 何故こんなコトするのか理解できなかった。 引き離すように力を込めるがレインの腕はなかなか外れない。 レインはゆっくりと言葉を紡いだ。 「良いでしょう。その望み、叶えて上げます」 「本当!」 「ええ、ですが―――――」 そう呟くと共に端正なレインの顔が近づき、アリシアの唇と重なった。 |