それぞれの一夜   2








アリシアは今の現状が理解できなかった。
そもそも何故、この男が此処にいるのだ?


今、自分達はこの男を捜して此処までやって来たというのに…
何故こんな所にいるのだ?


―――――ラファエル王国に行ったのではないのか?



怪しげに見るアリシアに気づいたのか、
レインは笑みを深めると言った。




「ああ、本当は先にラファエルに行こうと思っていたんですが…」



「………?」



「一目で良いから貴女に会いたくて…思わずこうして訪れたのです」


「………………」




ありえねぇだろう!!

アリシアはそう突っ込みたいのを我慢しながら頬を引きつらせる。
第一この男から賭けを仕掛けたのだ。
そんな奴が余裕で会いに来るなど…………



―――――――ん?




賭け………‥

賭って何だっけ?


…………………………

…………………………




「そうじゃん。今、目の前に居るのならさっさと捕まえて呪いを――――」



解いて貰えば良いんだ!

素早く頭の中を切り替えると、目の前の男に視線を移す。
レインは相変わらずいつもの笑みを浮かべているだけだ。



「―――覚悟しなさいよ……絶対この呪いを解かせてやるんだから……」



地を這うような低い声にレインは苦笑気味に言った。



「それは駄目です。一応賭ですからね。捕まえられなければ姿も見せても良いですし…」




――――つまり、捕まる気は更々ないと言うことか?

瞳を細めると再び前に手をかざす。
魔法を使っているのに誰にも気づかれないのは不思議だが、
今のアリシアはそこまで頭が回らなかった。



そのまま手をかざすと言った。





「天と地の詩よ響け。天空の歌声…地獄の響き、我に力を―――」


「―――――!?それは…」




流石のレインも焦ったように瞳を微かに見開く。
この呪文は天地の書、第七章に記名されている呪文の一つ…


―――――束縛呪文



だが、今のアリシアが上手くできるとは思っていないレインは焦ったように
魔法解除の呪文を唱える。



その途端、激しい光が部屋に広がった。




太陽のような眩しい光に思わずアリシアは瞳を閉じる。
と、同時に魔法の反動が一気に身体を襲う。




「きゃっ!!」




驚いたように後ろに吹き飛ばされるアリシア。
だが、背中を打つような激しい痛みは何時まで立っても来なかった。


恐る恐る瞳を開くと、そこには何とも言えない表情のレインが居た。














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