それぞれの一夜   1








アリシアは国王に用意された部屋のベッドに横たわりながら瞳を閉じていた。

別に眠いわけではない。
ゼバイルとリーナ姫の事が気になるのだ。


リーナ姫は部屋を出ていくとき、泣きそうな顔をしていたのをアリシアは覚えている。
蒼い瞳は涙が溢れんばかりだった。





「大丈夫かなぁ…二人とも……」




とにかく心配だった。

自分のせいで傷付くのは嫌だったのだ。

一応ゼバイルお兄さまが追いかけていったけど、
見つかるかどうかは分からない。


そもそもこの城は広いのだ。



探すのは容易じゃないだろう。





「……………………」





でも今の自分には何もできないのは分かっていた。
分かっているからこそ辛い……





「ああ、もう。私らしくも無い!どれも、これもあの性悪魔術師のせいだ!」






もはや完璧な八つ当たりとも言えよう。
枕を引きちぎらんばかりに引っ張っていたアリシアだが、急に引っ張るのを止める。
そしてゆっくりベランダを見た。



が、次の瞬間驚きのあまり目を見開く。
そう、そこには紛れもなくあの男、レイン・アラストルがにこやかに立っていたのだから。




「な、な、な……!!!」




思わず声にならない声が出る。
だが、レインはそんなアリシアの様子を面白そうに眺めると言った。




「久しぶりですね、アリシア姫。お気分はどうですか?」


「……し………」


「し?」



不思議そうに聞き返すレインにアリシアは手にしていた枕を全力で投げた。




「死ねぇぇぇえ!!!!このアホ性悪魔術師が!!!」



「相変わらずその元気さは健在ですね」




にこやかにサラッと言いのけると、レインは枕を余裕で避ける。
だが、それだけで済ませるアリシアではない。


今すぐ抹殺せんばかりの殺気を宿しながら両手を掲げる。
部屋の空気が一瞬にして冷ややかなものになった。



「この場で凍らせてやる!!」



魔力を最大限に集め、氷の刃をレインに投げつける。
これを浴びた者が生きていた姿をアリシアは見たことがなかった。


この場でその命を散らせることなど造作もないだろう。



しかし、レインはいとも簡単に氷の刃を砕くとにっこり笑った。




「流石アリシア姫。こんな上級魔法を呪文一つ唱えずに出すとは…普通の魔法使いでは無理ですよ」




だが、アリシアにはそんな言葉は耳に届いていなかった。
私の魔法が………うち破られた?




考えられなかった。



そんな…事が……





「う、うそ…………………」




大きく瞳を見開くと、その場に崩れ落ちるアリシア。
まさか此処まで力の差を見せつけられるとは―――――


く、悔しすぎる……





アリシアは目の前で不敵に微笑んでいるレインを睨み付けた。












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