最強の姫君、リーナ姫   4








カタカタ動く馬車の中、アリシアは瞳を細めながら、二人を見つめていた。

いや、呆れて見ていたと言った方が良いのだろうか?




こんな時にまでイチャイチャするのはよしてくれ。
と、言わんばかりにアリシアは顔に手を当てた。




目の前ではゼバイルの腕に嬉しそうにくっつくリーナ姫。
その横ではゼバイルが少し困ったように苦笑している。


だが、その表情からして満更でもなさそうだ。




―――――――はぁ、これが城に着くまで続くのかしら?





思わず遠い道のりにため息を付きたくなったのは言うまでもない。







「それにしても…レイン様がそんなことをなさるとは……」






信じられませんわ。などと呟くリーナ。



だが、その表情が緩んでいるのは気のせいだろうか?
いや、寧ろ楽しそうな――――


そんなことを考えているアリシアにリーナはとどめの一発を言った。






「それにしても……わたくしのお願い事を叶えてくれるとは嬉しい限りですわ」



「お願い事?」



「はい。一度で良いからゼバイル様の女性姿を見てみたかったんですの」



「「はぁぁあ!!??」」






思わずアリシアは絶叫する。
流石のゼバイルも放心状態だ。


ああ、魂が空に昇っていくよ……



灰と化したゼバイルを哀れに思いながらリーナを見つめるアリシア。



昔からどこか変だとは思っていたが此処までだったとは……





「ま、お兄さまが決めた相手だし、文句は言わないけど…」




何故好きになったのかは今だ疑問が残る。

綺麗で、美人で、優しくて…天使のような人。
周りの人間は何時もそう言っている。




確かにアリシアもそう思うけど―――――






「きっとゼバイルお兄さまの何か気に入るような所があったのよ」





納得するように前を再び見るが……


今だ放心状態のゼバイルを見て呆れ返る。




「こら、いい加減戻ってこい!」




思わず頭を叩くと漸く戻ってきた。
全く……無さ開けない兄だ。


ま、確かに先程の発言は吃驚したげど……



流石に婚約者の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったのだろう。






「でも、楽しみですわ……もうじきわたくしたちの結婚式ですし…ね?ゼバイル様」






リーナ姫は嬉しそうに腕を絡めながら呟く。
だが、それはゼバイルにとって苦痛でしかなかった。




だが、これから言わなければならないのだ…




結婚式は先送りにしなければならないのだと……。





その事を思うとゼバイルは言葉無く無言で瞳を伏せる。






いつの間にか城はすぐ目の前まで迫っていていた。









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