最強の姫君、リーナ姫   2








城へと続く一本道。


そこをアリシアとゼバイルは歩いていた。
日差しはいつの間にか天辺まで上り、ギラギラと照りつける。


アーリア城まで後少し…


だが、ゼバイルの顔が浮かないのは気のせいだろうか?
アリシアは覗き込むように言った。




「どうしたのお……ねぇさま?」



「いや、何か嫌な予感がしてな……」




思わず言葉を詰まらせながら呟くと、ゼバイルは腕をさすりながら答えた。
心なしか顔も青い……


だが、此処で引き返すわけも行かず、アリシアも後に続く。


それにしても――――






「リーナ姫にどうやって説明するつもりですか?まさかあの莫迦のことを言うのですか」



「まぁ、正直に言うしかないだろう。
もしかしたらレインに関しての情報も手にはいるかも知れない」




「でも…こんな姿で城に入れて貰えるのかしら?」





アリシアは不思議そうな顔をしながら呟く。

他人に知られないように極秘で行っているというのに……
こんな二人じゃ城に入れて貰えないかも知れない。


いや、そもそも自分がアリシアと言っても信じてくれないだろう。
城の門番達は……


だが、ゼバイルはにやりと笑うと言った。





「そこは大丈夫だ。ちゃんと手は考えてある」


「ほんとー?」





怪しげに見つめれば、ゼバイルが見ていれば分かると言った。
そんなことを言っている間に城の門の前まで来ていた。


あからさまに門番が不審な目で見てくる。
思わずアリシアはゼバイルの後ろに隠れた。




「おい、そこのお前達。何のようだ」




門番が不審そうに呟く。
どうやらこんな所に女一人と子どもが来ていることが怪しいと思ったのだろう。


アリシアもそんなことを思った。


だが、ゼバイルはゆったり綺麗な笑みを浮かべると門番に見せるように何かを取り出した。


それって確か――――




「失礼しました!隣国のクロレストラ王国からの使者とはつゆ知らず先程のご無礼、お詫び申し上げます!」





驚いたように門番は頭を下げると言った。

そんな様子にアリシアはすごーい。と、目を見開く。
ゼバイルは気にした様子もなくニッコリ微笑むと言った。




「そんなことは良いですから早く門を開けて下さい。急ぎのようですから」



「は、はい!!」



「………………」





先程とは変わって、女性のような言葉使いにアリシアが引いたのは言うまでもない。
だが、意外とその姿のゼバイルに合った口調だった。


もうこれは何と言っていいのやら……



呆れたような視線を送れば、ゼバイルが意味ありげに笑ってきた。





この確信犯めが!!





アリシアは叫びそうになるのをグッとこらえ、笑みを浮かべると先を干す。





「さ、お姉さま行きましょう」



「ええ、では…お仕事頑張って下さいね」





優美な笑みを浮かべ囁くゼバイルに門番は見取れている。


はっきり言って情けない姿だ。
思わずため息を付きたくなりながらアリシアは瞳を閉じると開いた門の中に入っていく。
ゼバイルもその後に続いた。




「な、俺の言ったとおりだろ?」





片目を瞑り、何とも言えない笑みを浮かべるゼバイルにアリシアは心の底から呆れたような視線を送った。

自分では女扱いされると怒る癖に……
こういった時には利用するんだから……



「あんまり門番さんを騙しちゃだめだよ」




アリシアが咎めるように言えばゼバイルは肩を竦めるだけで、反省しているような素振りは見せない。

寧ろ楽しそうだ。





「勝手に騙される方が悪いんだろ?」






――――――騙す方が悪いに決まってるでしょうが!!




思わずそう叫びたくなったのは気のせいではあるまい。














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