幼き記憶 5 ―――――……シア……… ――――――――アリ……シア………… 「――――――ん?」 誰かに呼ばれるような気がしてアリシアは目を覚ました。 窓から朝日が降り注いでいるのが分かる。 朝だ。 眠たそうに欠伸をすると、再び寝ようとする。 が、その行為はゼバイルの手によって実行することは出来なかった。 何時の間に部屋に入ったのかは知らないが、 ゼバイルが呆れたような表情で被っていた布団を剥がす。 アリシアは諦めたように目の前の人物を見た。 「…………ゼバイルお兄さま……おはよう御座います」 「おそよう、アリシア」 漸く起きたアリシアに挨拶をするゼバイル。 アリシアはベッドから降りると辺りを見渡す。 先程の台詞から朝、ではないのだろう。 「今何時?」 確認するかのように聞くと、ゼバイルは瞳を細めながら言った。 「十一時……」 「………………あ、あは;;御免なさい」 どうやらもうすぐお昼の時間らしい。 誤魔化すかのように謝ると、ゼバイルがあからさまにため息をついた。 むっ…………謝ったのに。 膨れたようにゼバイルを見ていると、 何やら朝食のようなものを出してきた。 「これって、朝食だよね」 「ああ、九時までしか朝食は出ないからな。わざわざ頼んで貰って置いたんだ」 お腹空いただろ? と、首を傾げて聞いてくるゼバイルにアリシアのお腹が音を立てて答えた。 その様子にアリシアは真っ赤になり、ゼバイルはくつくつ笑う。 「どうやらお腹は正直みたいだな。ほら、食べろ。それを食べたら城の方に行くからな」 「うん」 「じゃ、俺は部屋の外にいるから早くしろよ」 ゼバイルは言いたいことを言い終えるとそのまま部屋を出ていく。 再び部屋に静寂が戻った。 今日はお城に行かなければならないのだ。 アーリアの城に……… 「―――――――何か玩具にされそうだな……」 お兄さまの婚約者はどこかうちのお母様に似ているところとかあるから…… そう、可愛いものが大好きなところとか。 よく、小さい頃は着せ替え人形にさせられていたのを覚えている。 「ま、何とかなるか」 あくまで気楽に考えるアリシアだが、現実はそこまで甘くはなかった。 |