幼き記憶 4 誰もいない、静かな庭に二人は居た。 驚いたように見つめるレイン。 それに気づかず泣き続けるアリシア。 どのぐらいそうしていたのだろうか? 漸く、レインは声を出した。 「――――何故、泣いているのですか」 「―――――――!!?」 アリシアは大きく肩を震わせると、声をした方を見つめる。 その表情は堅かった。 まるで敵を見るかのような冷たい目―――― どことなく似ていると思った。 自分に………… 「―――――――誰?」 アリシアが警戒するかのように言った。 その瞳は確かにレインを見つめている。 そんなアリシアの警戒を解くようにレインはゆったりと笑みを浮かべると言った。 「私はレイン・アラストルと申します。こちらの方に貴女がお一人で歩いていくのが見えたので、着いてきたのですが……迷惑だったでしょうか」 「いいえ、そんなことはありませんわレイン様。」 そのまま何事もなくすまそうとするアリシアにレインは一歩近づく。 その顔からは笑みが浮かんでいる。 だが、それはただ張り付けてある笑みだった。 「で、アリシア様は何故泣かれているのですか?」 「そ、それは………」 「言えないことでも?」 「―――――人には色々事情がありますのよ?レイン様。それ以上聞かないでくださらない?」 レインの介入を拒絶するアリシア。 その表情からは空っぽな笑みだけがあった。 「そもそも、そんな張り付けた笑みを見せられても私は安心などしませんわ」 キッパリ言い切ると、アリシアはその場を今度こそ後にした。 一切振り返らず、見ることもなくその場を去る。 残ったレインは楽しげに笑った。 「ふふふ、珍しい……鋭い観察力だ。まさかばれるとは思わなかったよ」 レインは一人、楽しげに笑った。 それは今まで見せていた笑みとは全く違う、本当の笑みだった。 「気に入った。絶対、彼女を手に入れてみせる」 それは興味本位だった。 そう、初めは興味本位だったのだ。 自分が初めて自分から知りたいと思った人物。 だが、今はそうは思わない。 ――――――いつからか、レインは本気になっていたのだ。 アリシアに対して、本当に好きになっていたのだ。 「好きだよ、アリシア……」 囁いた言葉は風に乗って消えた。 |