幼き記憶   3








アリシアと初めて会ったのは十七歳の時、とあるパーティーに行ったときのことだった。



本当はパーティーなど行くつもりなどさらさら無かったのだが、

師匠ことローレシア・フィスティーラに無理やり連れてこられたのだ。






『人生の社会勉強をしろ!』







などと理不尽極まりないことを言われ、このパーティーにやって来たは良いが、誰も知っている者は居ない。
無論、師匠などどこにいるか見当もつかなかった。






「はぁ、俺にどうしろと?」







困ったようにため息をつけば、すぐ近くにいる女に目が止まった。




金髪の長い髪に薄ピンクの瞳。





クロレストラ王国の第一王女、シリア・クロレストラだ。
いろんな男に囲まれ、ちやほやされている。




だが、レインはあまりそう言った類の人間は好きではなかった。
確かに外見は綺麗かも知れないが、あれは相当黒いのは間違いない。





そう、自分と同じように………






そんなことを思いながら歩いていれば幾らでも女はよってきた。



自分で言うのも何だが、女に不自由したことはない。
この外見のこともあるだろうが、この猫を被った性格のおかげもあるだろう。




いつもの笑みを張り付け、やんわりと近づいてくる女達を断っていく。

流石自分と誉めてあげたい気分だ。











そんなことをしていると、一人の女の子に目がいった。



十五歳ぐらいの女の子だ。


灰色がかった黒い髪は綺麗にアップされ、白い顔にはうっすらと化粧が施されている。
薄ピンクの瞳はどんな宝石よりも綺麗だ。




生まれて初めて此処まで綺麗な女性を見た。





レインが少女にしばし見取れていると、よってきた女性に聞いてみる。






「すみません、あそこにいる女の子って誰だか知っていますか?」



「ああ、アリシア様よ。知らないの?クロレストラ王国の第二王女のアリシア様。
珍しくパーティーに出てきたと思ったらあの顔じゃあねぇ……
まるで感情のないお人形さんみたい」






くすくす笑う声を無視しながらレインはアリシアを見た。
確かにお人形みたいに整った顔立ちはとても綺麗だ。



だが、表情というものが全く見あたらない。
感情がすっぽり抜けているみたいだ。



だが、その表情は寧ろ、怒っていると言った感じの方が強く感じられる。






そんなことを考えているうちにアリシアは何処かへ行ってしまった。


その後を追いかけるレイン。

どんどん人混みから離れていく。
それはレインにとってもラッキーだった。



そして、着いたのは裏庭だった。




物陰からそっとアリシアを見ると、そこには顔をうつむけ、泣いているアリシアの姿があった。











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