幼き記憶 1 モンスターを倒しながら二人はやっとの事でアーリアに着いた。 既に、日は傾き夕焼け色に空は染まり始めている。 ゼバイルはしばし考えた表情を見せた後、言った。 「今日は城に行くのはやめて、宿に泊まることにするか」 「賛成!」 二日ぶりのまともな寝床にアリシアは純粋に喜んだ。 ここ二日はずっと野宿だったが、あまり気持ちのいい物ではない。 いつモンスターに襲われるかも分からないのだから。 そのため少なからず睡眠不足になっていたことには間違いない。 嬉しそうにはしゃぐアリシアを見つめながらゼバイルは近くの宿に入っていった。 無論、部屋は二つ取る。 仮にもゼバイルは男だ。一緒に寝るなどありえない。 試しにアリシアがからかうように 「お姉さま、一緒に寝る?」 などと、言えば拳骨が飛んできた。 本気だったのか、結構痛かった。 まぁ、そんなことをしながらアリシアは自分の部屋にはいるとベッドに向かって荷物を投げた。 そのまま一緒にベッドにダイブしたいのを堪えながらアリシアは部屋にある風呂場にお湯を溜める。 寝る前に何としても身体を綺麗にしておきたかったのだ。 ここ数日のモンスターとの戦いで体中彼方此方が悲鳴を上げていた。 魔法の訓練は城にいた頃十分していたし、攻撃呪文は得意中の得意だ。 だが、逆にそれが今回は仇になった。 威力が強すぎて、子どもの姿の自分ではコントロール仕切れないのだ。 お湯がたまったのを確認すると、ゆっくりお湯に浸かる。 身体がゆっくり暖まるのが分かった。 此処まで疲れたのは久しぶりだ。 「やっぱり何とかしなくちゃいけないね。自分のことだし」 ポツリとアリシアは呟くと、風呂の湯を見つめる。 もともと、自分がレインとの結婚を断らなければこんなことにはならなかった筈だ。 だが、どうしてもアリシアは嫌だった。 そもそも結婚などするつもりなど無い。 自分は一生独身で生き続けるつもりだ。 それに本当は心から好きな人はいる。 だが、その人は絶対自分に振り向いてくれることはなかった。 アリシアにとってそれが何より悲しかった。 確かに自分を大切にしてくれてはいる。 だが、それは恋愛対象としてではなく、妹みたいな感情でだ。 それに彼が好きなのは――――― 「――――――――どうして私じゃ駄目なんだろう」 悔しさと悲しみがごっちゃまぜになっていくのが分かる。 アリシアは気持ちを落ち着かせるために風呂を上がると 着替え、そのままベッドに倒れ込んだ。 こんな醜い感情なんかいらない。 知りたくもない! そんなことを思いながらアリシアは瞳を閉じた。 |