戦うときの定義   3








はぁ、はぁ、疲れたよぉ〜!!





思わず泣き言を言いそうになる口をキュッと固く結び、アリシアは前を見据えた。
モンスター達と戦ってから一日が経とうとしていた。



ゼバイルは前方の方を気にしながら素早く進んでいく。
一方のアリシアはこのもの姿のせいか思うように先に進めない。




足も重たくなってきたような感じがする。
だが、ゼバイルお兄さまのお荷物だけにはなりたくなかった。



ただその一身でアリシアはひたすら足を進ましていた。
ただでさえモンスターとの戦いで迷惑をかけたのだ。
これ以上かけられないのは当たり前だろう。





そんなアリシアに気づいたのか、突然ゼバイルは立ち止まると振り返った。
思わず、アリシアも立ち止まってしまう。


驚いたようにゼバイルを見つめれば、ゆっくりと剣に手をかけていた。






こ、こ、殺される!!??





ありえないことを考えつつもパニックに陥っているアリシアに対し、
ゼバイルは冷静な表情で一歩踏み出した。

剣が煌めく。


思わず、身を屈めると、ゼバイルはその上を剣で斬りつける。
その途端、モンスターの叫び声がその場に響き渡った。


血生臭い臭いがその場に漂う。



思わず驚いたように見ればそこには剣で切り裂かれたモンスターの残骸が残っていた。





「……………後ろにいたの?」





気づいていなかったアリシアは驚いたように瞳を開くと呟く。
ゼバイルが明らかに呆れたような目で見てきたのが分かった。


だが、それ以上咎めることはせず、気をつけろよ。と、呟くと再び歩き出す。




アリシアは思わず呆然としてしまった。






てっきり怒られると思ったのに、ゼバイルお兄さまは何故か怒らなかった。
寧ろ、心配したような目で見てきて……





「ゼバイルお兄さま…もしかして風邪?」





などと、驚いたように呟き、額に手をあてがうと、お兄さまに頭を叩かれた。

これは結構痛かった…

涙目になりながら、酷い。と、愚痴っているとゼバイルがあからさまにため息をつくのが分かる。



アリシアは次に続く言葉を待った。





「お前なぁ、そんなに集中力無ければこの先やっていかれないぞ。
ただでさえ俺もこんな姿で思うように剣が使えないんだから、もっとちゃんとしてくれ。
あと、疲れたのなら早く言え!」





「え?」






突然の言葉にアリシアは大きく瞳を開く。


それは意外な言葉だった。




いつから気づいていたのだろうか?
ばれないように必死で追いかけていたというのに………



何と言っていいのかわからないアリシアにゼバイルはぽん。と、
頭に手を乗せるとそのまま髪の毛をグチャグチャにする。





「ちょ!お兄さま!!」






怒ったようにアリシアが怒鳴れば、ゼバイルはにやりと笑いながら言った。





「どうせ俺に迷惑をかからないようにしてたんだろう」



「……………………」



「でも、またこんなことがあってももしかしたら助けられないかも知れない。
だから、そんなこと考えている暇があったら少しは休め。
とにかく、後一日でアーリアにつく。そうしたら魔力を押さえる魔道具があるかもしれない。
それまでの辛抱だ。今のお前には体力をつけることと、集中力を維持することだな。
魔法の方は二の次だ」







照れ隠しで、何やら言っているが、アリシアには十分伝わった。

ゼバイルが心底アリシアを心配していることが。




嬉しくなったアリシアはゼバイルに抱きつく。
突然の行動になすすべもなく、ゼバイルは倒れかけるが、何とか止まることに成功した。




「お兄さま大ー好き」





文句の一言でも言ってやろうかと思うが、
この言葉を聞いた後では言うにも言えないゼバイルの姿がそこにはあったとか。








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