戦うときの定義 1 「ねぇ、ゼバイルお兄さま…最初からヤバイ状況ですね……」 アリシアは周りを囲む魔物達を見据えながらにやりと笑った。 ゼバイルも腰にかけてある剣に手をあてがいながら頷く。 「ああ、まさか町を出た途端これとは……何とも恐れ入る」 だが、その表情は明らかに楽しげだ。 ゼバイルはゆっくりと呟いた。 「なぁ、此奴ら全員倒せると思うか?」 「えー分からないかも」 アリシアは困ったような顔をしながら手を振り上げる。 何と言ってもこの身体では魔法を使えるかどうか分からない。 「とりあえずやってみますか」 アリシアは静かに呟くと、手を前にかざした。 「―――――天よりいでし風よかの者達を吹き飛ばせ!」 高いソプラノ声がその場に響き渡る。 途端に凄い突風がその場に襲い掛かった。 「きゃっ!!」 思わず反動でアリシアは吹き飛ばされる。 痛そうに打った腰を撫でながらアリシアは立ち上がる。 どうやら身体が子どものせいで、魔法が上手くコントロールできないようだ。 「もう!この身体最悪!!!魔法すらコントロール出来ないなんて……」 怒ったようにその場でじたんばを踏んでいると、ゼバイルの声が聞こえてきた。 「アリシア!まだ敵はいる。油断はするなよ!!」 「うぅ……わかってる!でも上手く魔法がコントロールできないよぉ」 情けない声が出てしまうのはこのさい仕方がない。 その間もゼバイルはモンスターに剣を振るいながら此方にやってきた。 その額には汗が滲んでいる。 どうやらゼバイルの方も色々と不便があるようだ。 そんな姿も綺麗。とか、思ってしまうアリシア。 じゃなくて―――――― 「あと、何体ぐらいいるか分かる?ゼバイルお兄さま」 アリシアはゼバイルを覗き込むように言うと、ゼバイルは短く答える。 「この数なら大体、まだ十数匹は居るな」 「十数匹―――――やっぱり此処は私の魔法で―――――」 「まて、アリシア。今のお前じゃ魔法を上手くコントロールできていない。そんな状態で魔法を使っても無駄だ。寧ろ俺達にまで魔法が降りかかるかも知れない」 「じゃあ、どうしたら……」 困ったように叫ぶアリシア。 確かにゼバイルの言うとおりだ。 このまま自分が魔法を使っても上手くいかないだろう。 こんな身体でなければ十分戦えるのに… アリシアは悔しそうな顔を浮かべると、囲むモンスターを睨み付けた。 |