不思議な老婆   3








「で、決まったかね?」



数十分後、老婆は楽しげにうんざりとした表情のゼバイルを見つめ言った。
アリシアの手の中には何着も洋服が収められている。



まるでこれから旅に行くのだから当然だ。
と、言う感じのアリシアがにっこり笑っていた。






「うん!これを全部ちょうだい」



「分かったよ」







嬉しそうに呟くアリシアに老婆は微笑むとしっかり袋に入れてくれた。
旅に出る前に何でこんなに疲れているのだろうか?
ゼバイルは密かに米神を押さえながらこれから旅先が心配になってきた。



そんなゼバイルの心配にも気づかないのか、アリシアは楽しそうにしている。
そんな顔にゼバイルは更に溜息を付いた。






「さ、ゼバイルお兄さま!さっさと隣国のアリーナに行って
あの性悪魔術師を捕まえましょう!!」




「ああ………」






私のために!と、最後聞こえたのは気のせいだろうか?
とにかく、隣国のアリーナに行かなければ話にならない。
二人は老婆にお礼を言うとその場を後にした。







再び店に静寂が戻る。








老婆はふっと、浮かべていた笑みを一変させると、誰もいない店の中に向かっていった。
まるで誰かに語るかのような口調だ。






「――――――さて、今回もまた凄いことをやらかしたねぇ、あんたは。
焦る気持ちも分かるけど、今回はやりすぎ……どうなっても知らないよ?私は」






呆れたような口調。

だが、その表情はあの優しい笑みをしていた老婆には似てもにつかないほど冷たい表情だった。





「はぁ、私としては何で貴女が此処にいるのかの方が不思議ですけどね」




突然老婆の声に答えるかのように一人の青年が現れる。
いや、突然現れたかの様だ。




老婆の前に現れたのは一人の若い男。




サラサラの銀色の髪を靡かせ、スカイグレーの瞳をゆっくり老婆に向ける。

端正な顔に笑みが広がった。


と、同時に老婆はとてつもなく嫌そうな顔をする。







「我が師匠であり、世界最強の魔女と詠われるローレシア・フィスティーラ」




「…………お前に言われると嫌みにしか聞こえんな」







老婆は嫌そうな顔を背けながら溜息を付いた。
その表情からは苦労が滲み出ている。




そんな老婆にレインを静かに笑みを深めた。





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