水面下の花びら 5
クロレストラ王国に帰ってきた二人を迎えたのは城中の兵士やメイド…
そしてゼバイルやシリア……お父様やお母様だった。
「お帰りなさいアリシアちゃん」
「ただ今戻りました、お母様…みんな」
微笑みながら話しかけてくるダリアに涙が出そうになるアリシア。
その様子を見ていたゼバイルとシリアが駆け寄りアリシアを羽交い締めにする。
その表情はどこか怒っているようにも見えた。
「こら、アリシアちゃん。私達に相談もなく勝手に城を抜け出したわね」
「本当だ。心配したんだからな、アリシアの姿が見えなくなったときは」
苛立った様子のゼバイルに対し、シリアはどこか楽しげだ。
この様子からしてシリアお姉さまは知っていたのだろう。
てか………私、手紙出さなかったけ?
「ダリアお母様……私、手紙出しませんでしたっけ?出掛けるって……」
「あら、そう言えばそうだったかもしれないわね」
「―――――――お母様……;;」
ダリアの言葉にゼバイルはため息を付きながらそう呟く。
そして視線を後ろに向けると改まった表情をしながら言った。
「で、レインとはどうなったんだ?」
本当に婚約解消したのか!?と、凄い勢いで聞いてくるゼバイルにアリシアは苦笑した。
本当に嫌いなようだ。レインのことを……
それをレイン自身も感じたのか苦笑しながらゼバイルに向き直ると言った。
「これからよろしくお願いしますね、ゼバイル兄さん」
「………………それって…………」
「はい、アリシア姫と私は正式に結婚することになりました」
「まぢかよ……」
その言葉に激しく落ち込み始めるゼバイルを余所に
シリアは楽しげにレインを見ながら言った。
薄ピンクの瞳が怪しげにレインを見つめる。
まるで何かを企むときのような目だ。
「それにしても………最初、貴方がアリシアちゃんの婚約者になったときは
この時が絶対やってくるとは思いもしなかったけど…どうやら何とか丸く収まったようね」
「ええ、おかげさまで」
「ふふふ、じゃあ私のこともお姉さまと呼ぶようになるね」
「……………ええ、まぁそうですね」
何かを企むかのような笑いをするシリアに流石のレインも冷や汗をかく。
この兄姉の中で一番ヤバイのがシリアだ。
ゼバイルは何だかんだ言ってもやさしいところはあるが、
シリアはそう言ったことが全くない。
寧ろ危険人物の中に入るほどだ。
そんなことを考えているレインの考えを
よんだかのようにシリアはにっこり笑いながら小声で言った。
「大丈夫よ、今は何もしないから。それに叩くなら徹底的にっていうしね」
それなりに準備が必要だし。と、笑顔で言い切るシリアにレインは考え直した。
危険人物なんて可愛らしいものじゃないと。
悪魔だとこの瞬間思ったそうだ。
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