レインとの久しぶりの再会 2
「それにしても……お前の姫さんセイレーンに連れて行かれたな」
「…………そのようだね」
「なぁ、セイレーンって肉食じゃなかったか?」
「……………………」
ルイスの言葉にレインは浮かべていた笑みが完全に消えた。
寧ろ青ざめているのは気のせいだろうか?
そのままどっかに走っていきそうなレインの腕を掴みながらルイスは呆れたようにため息をつく。
現に肉食だったとしてもローレシア様に勝てるはずもない。
伸されて終わるだけだ。
第一何処に行くつもりなのだ?この莫迦は……
「とりあえず落ち着け。命を粗末にするな。むやみに海に行ったって姫さんは見つからないぞ」
その言葉にレインは渋々抵抗するのを止め、ルイスを見る。
それにしてもこの男が変なことを言うから自分でもありえない行動をしてしまうのではないのか?
思わずレインはジッとルイスを睨み付けると言った。
「コレ以上焦らせるようなことは言わないでくれるかい?」
「いや、俺は真実を言ってるだけなんだが……」
「いいから」
「………………」
有無を言わせぬ口調にルイスは黙る。
全く、師匠が師匠なら弟子も弟子だな。などとぼんやり考えながら思う。
大体俺は真実を言っているだけであって……
仕方がない。レインがそこまで言うのならやめておいてやろう。
だが……
「ずっと此処に居るつもりか?あの場所からだと普通に二日はかかるぞ?」
「…………」
「ほーら、兎に角……今日は大人しく家に戻ろうな」
ルイスの言葉に黙り込んでしまったレインを引っ張るような形で引きずり始めるルイス。
第一、こんな場所でずっと立ちっぱなしは疲れるというモノだ。
しかも此処はいろんな人々が出入りする場所でもある。
なのに此処数日人があまり出入りしないのはこの莫迦が居るからだろう。
「二日後にまた来ような。此処にいると邪魔になるから」
「え?ちょっと、ルイス」
「はいはい。他人の迷惑も考えましょう。
お前の黒いオーラを当てられて普通で居られるヤツは居ないんだからさ」
「その言い方、酷くない?」
「いいや、全然」
いや、このぐらい言ってやらなきゃ此奴とはやっていられない。
そもそも此奴とこんな風にしゃべれるのは俺ぐらいなモノだろう。
皆レインと何処かしら距離を置いている。全く……情けない奴らめ。
此奴だって意外と普通な奴なのに。ただ天才と周りが騒いでいるだけで……
「ま、どうでも良いんだけどな」
俺にとっちゃどうだって。
ルイスは密かに笑うとそのままレインを引っ張りながらその場を後にした。
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